連載小説「六連星(むつらぼし)」第31話~35話
連載小説「六連星(むつらぼし)」第33話
「福島第一原発の3月11日」
石巻へ向かう響と英治を乗せた東北新幹線が、福島駅へ滑りこむ。
福島県の県庁所在地駅でもある福島駅は、東北新幹線と山形新幹線、
東北本線と奥羽本線などの分岐駅として、もうひとつの郡山駅と並んで県内に
おける鉄道の要衝になっている。
在来線の駅と新幹線の駅は、一本の跨線橋で連結されている。
全体としてひとつの駅になっているが、実際には、地上にある在来線の乗り場と、
高架上にある新幹線コンコースは、遠くかけ離れている。
「ここが、あの福島・・・・」
思わず響が、車窓に眼をこらしている。
そんな響の耳へ、どこかで聞いた覚えのある、軽快な発車メロディが
聞こえてきた。
思い出そうとして怪訝な顔をみせている響を見て、英治が鼻で笑う。
「知らないのか。高校野球甲子園のテーマ曲、『栄冠は君に輝く』だ。
福島市出身の古関裕而の生誕100周年を記念して、
昨年の4月から福島駅に導入されているんだ。
ちなみに、在来線の曲は、昔懐かしい『高原列車行く』だぜ」
作品名:連載小説「六連星(むつらぼし)」第31話~35話 作家名:落合順平