小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

連載小説「六連星(むつらぼし)」第31話~35話

INDEX|6ページ/15ページ|

次のページ前のページ
 



 「いやだぁ、トシさんたら、馬鹿なことを言わないで!
 お母さんの胸は大きいけれど、私の胸はぺしゃんこで、まっ平らだもの。
 あ・・・・まずい。ついつられて、聞かれてもいない余計な事を、
 しゃべってしまいました。いけない、いけない」

 「隠し事が出来ないところが、君のいいところだ。
 じゃあ、この金は確かに預かって、俺が岡本に返しておこう。
 そしてここからが、実は肝心な話になる。
 岡本から、英治くんに渡してくれと頼まれた物が有る。
 これは岡本が用意をしたものだ。ほぼ同額の現金が入っている。
 この封筒は、英治には内緒で、黙って響に預けておけといわれている。
 慰労金だ。3年分の退職金みたいなものだろう。
 きわめて安全な金だから、隠し持つ必要などはないが、
 英治に渡したのでは、ありがたみに欠けるだろうと、岡本が笑っていた。
 これを資金に、安心して伯父さんを探しに行けばいい。
 という伝言も、岡本からことづかってきた」

 「なんだぁ。やっぱり、大人の世界は全部、お見通しなんですね。
 悪い事は、出来ないようになっているんだ。
 それにしても、反応が淡白ですねぇ。
 トシさんは、私の心配はしてくれないのかしら?
 若い乙女が男に着いて、何が有るか解らない被災地へ行くというのに、
 なんで、頭から反対をしないのかしら?」


 「自分の娘なら、俺も心配をする。
 だが、君は清子さんから預かった存在だ。
 清ちゃんと相談したら、この先の事は全部、響に任せようという話になった。
 そう言うことだからは君は、なにも心配せず被災地へ行けばいい」

 「そうなの?」響が、きょとんとした表情を見せる。
(また二人して本当のことに触れず、私を誤魔化そうとしてる・・・・
まぁいいか。そのうちに、すべてがはっきりしてくるでしょうから)

 「でもさ。なんで岡本さんやお母さんたち大人に、全部ばれているんだろう。
 英治は上手く盗んできたと言っていたし、私もばれないように、
 上手に隠したつもりなのに、みんなお見通しですね、大人たちには。
 怖いな・・・・大人たちの世界って。
 なんだか秘密めいたことばかりが、多すぎるもの」

 「ん、。何か言ったか?」

 「いいえ、何も言いません。独り言です。
 例えば私がこのまま英治と、伯父さんを探す旅に出て、
 いつのまにか、男女の仲になって、子供でも出来たらどうするの。
 全然そういう心配を、してくれないわけ?」

 「君のお母さんも、岡本も100歩譲っても、
 まったくそういうことにはならないだろうと、断言していた。
 俺には解らないが、男と女が、そういう風になるための要素も雰囲気も
 君たち二人からは、伝わってこないそうだ。
 英治君がその気になったところで、当のお前さんがうまくかわしてしまう
 だろうと、おおかたが見ている。
 俺もなんとなくだが、そんな気がするし、そんな風に納得している」

 「なんだぁ・・・・トシさんも、わたしの心配をしてくれないのか。
 つまんないな。放っておかれるのも」

 「そう言うな。本心を言えば、心配しているさ。
 だけど、岡本やお母さんたちの手前そんなことは、口が裂けても言えない。
 内緒にしておいてくれよ響。俺が心配していることは。
 ここだけの話だぞ」

 (うん間違いなく、やっぱりトシさんは私のお父さんだと思う・・・・
 たぶん。きっと。間違いなく・・・)なぜか響が、嬉しそうな微笑みを見せる。

 「冷めるぞ、ほら。みそ汁」

 ぶっきらぼうに言い捨てた俊彦が、朝から大胆なことを言い始めた響を、
実は、心の底から心配しながら見つめている。