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連載小説「六連星(むつらぼし)」第31話~35話

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 「それだ。その軍資金の出所が問題だ。
 危ない所から放出された、闇工作ための危ない金のことだろう。
 破門にしたとはいえ、金の問題はまた別の話になる。
 岡本から、その金は一度、俺の所へ戻してくれと強く頼まれている。
 穏便に済ませるのためには、その金を、組に返還すること
 が絶対の条件だと言う。
 お前。預かっているだろう、その金を」

 「はい。いまでも私が、預かっています」

 「英治のやることだ。どうせそんなことだろうと、岡本も心配していた。
 とりあえず、その金は岡本に帰してくれ。
 あとのことは大人たちにまかせろ。対策はすでに考えてある」


 響が、じっと俊彦の目を見つめている。
軍資金の背後にある、組同士の金銭上のトラブルほど、始末に悪いものはない。
『男気』を表看板にする任侠たちは、義理人情という表の看板の陰で、
桁違いの金額の利権を、ひたすら追いかけまわしている。
いいかえればやくざと暴力団は、金の匂いにきわめて敏感な男たちの、
危険な集団と言える。

「そうよねぇ。早めに返すべきお金ですねぇ」
パタンと箸を置いた響が、その場ですっと立ちあがる。
俊彦が見つめている目の前で、躊躇することなく、シャツのボタンを外し始める。
あっというまに響が、ブラウスのすべてのボタンを外してしまう。
響の指先が、勢いに乗ったまま、さらにブラウスの襟にかかる。
シャツまで脱ぎ捨てようという勢いだ。


「おいっ。」大胆すぎる響の行動に、俊彦のほうがうろたえる。
「冗談ですっ」チョロリと赤い舌を見せた響が、そのままくるりと反転をする。
背中を見せながら、自分の胸元をこそこそと探っていく。


 「はい。英治から預かったものです、これで全額です」

 響の胸から引き出された、ぬくもりを保ったままの茶封筒が、
俊彦の前へ、ポンと差し出される。


 「それにしてもお前・・・・
 実に、大胆な処へ札束を隠すんだなぁ。びっくりしたぞ・・・」

 「あら、そうかしら。最初はパンツの中へ隠しました。
 でもね。あわてておトイレに駆け込んだ時、危うく便器に
 落としそうになっちゃったの。
 ここでは危ないということで、ブラジャーの中へ突っ込んでみたの。
 でも片方だけだと、微妙な形で大きくなるし、
 何かのたびに封筒がごわごわ動いて、あたしのおっぱいを刺激するの。
 なんだかんだと、けっこう隠すのに、四苦八苦してきたのよ。
 ああ、やっと、さっぱりしました」


 「なるほどね。じゃあこの香りは、響のおっぱいの匂いかな」