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連載小説「六連星(むつらぼし)」第31話~35話

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・・・・・・

 4月6日には、遊楽館という避難所で当直をしていました。
ある男性が苦しそうだと言われ、診察をします。

 しかしすでに呼吸は停止しており、共同偏視があり、
何か大きなイベントが起きたことは明らかでした。
救急車の到着は30分後でした。
彼は泣き崩れる妻の脇で、口から血を流しながら息を引き取りました。

 湊中学という避難所にも行きました。
リウマチの女性が手首を腫らし、痛みに耐えていました。
受診の手続きを取りましたが、彼女はその避難所から沖縄への
移住を希望しました。
沖縄は県をあげて受け入れをしていると、あるMLで知ったからです。

 沖縄の担当者に連絡をすると、『罹災証明申請書のコピーが必要です』
『沖縄の受け入れは、災害救助法ではなく県の予算なので、
5人まとまったらはじめて飛行機に乗れます。
飛行場までは自分できていただく必要があります。
そこでチケットをお渡しします。』
『申込書はインターネット上から、書式をダウンロードしていただき、
印刷して書きこんでください』と、担当官から告げられました。

 非常に困難な条件が揃っています。
少なくともパソコンとプリンターを持った援助者と、飛行場までの足、
罹災証明書の申請を行うために市役所に行くという手順を、
その足が腫れた女性が手配しなければ不可能なのです。
責任者の方とお話ししましたが、埒があきませんでした。

 湊中学は、瓦礫の中にあります。
入り口にはニチイのデイサービスセンターの車が3台、
見るも無残な形で横付けになり、津波に洗われたホコリとヘドロが
そのままになっています。
そこでは避難途中の方がかなりの数亡くなられたとのことです。
近辺には人影はまばらで、地震から1ヶ月ほどたった現在でも、
車が家に突き刺さり、魚の腐った匂いが立ち込めています。

 湊中学避難所には電気も、水道も、下水もありません。
便はダンボール製の看護師手作りの便器にして捨てています。
被災からすでに、一ヶ月も経とうと言うのに・・・・

 果たして、これを市の職員が中心になって解決できるのでしょうか。
彼らも罹災しているのです。明らかに疲弊しきっています。
毎日、市民から多くの非難をあびながらの仕事です。
あまりにも広範囲です。
あまりにも(被災者の)人数が多すぎます。
未だに、自宅避難者の詳細も分かっていません。

 市内の3地区の在宅避難者の調査をします。
ボランティアを東京、千葉、宮城などから60名集め、
市の保健師さんに情報をもらいながらの仕事です。
しかし、市内のごく一部なのです。
このデータが市全体の被災者の推計に使用でき、少しの被災者のためになり、
そして一番には今後の計画の助けになればと考えての行動です。

ふと、これは私の仕事だろうかと思うことがあります。

 国会議員の皆さん。是非、立ち上がってください。
やっている、と思われるのであれば、そのやり方がどこか間違っているのです。
上手くいっていません。
非常事態宣言を地区を限定して発するのもひとつの方法でしょう。

とにかく、物事が遅きに失しています。

・・・・・・

  (原文のまま、引用)