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連載小説「六連星(むつらぼし)」第31話~35話

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 「トシさんが、岡本さんに頼まれ、体調を崩した原発労働者たちを
 保護して、医療関係へ紹介をしていることは、君も知っているだろう。
 各地を転々としながら原発に従事をしてくれば、体内被爆から身体を壊して、
 最後には、健康を害することになる。
 だが、そういう人たちのことは、まったく公表されていない。
 原発労働者が、被爆で健康を損ねたという事実を、国も電力会社も
 ひたすら隠し続けている。
 発病をして危険な状態になっている人たちは、水面下で沢山いる。
 叔父さんはたぶん、3年くらい前から、原発の仕事に従事しているはずだ。
 そうなると、3.11よりも以前から、被ばくしていることになる」


 「石巻といえば、3.11の津波で、甚大な被害を受けた地区でしょう。
 海岸線は断線をしたままだというし、
 津波の被害で、最大数の犠牲者を出したところでしょ。
 どうしているんでしょうね、茂伯父さんは・・・・
 無事で、元気に生きていてくれるといいですねぇ」

 
 「仙台で乗り換えて、俺は何度も、在来線を使って石巻へ行った。
 しかしいくら探しても、未だに有効な手掛かりが見つからない。
 石巻では、津波が深い傷跡を残したままだ。
 海沿いの一帯は、いまだに復興の見通しすらたっていない。
 数千人が相変らず行方不明のままだ。
 そうした人たちの捜索は、いまだに継続をしている。
 石巻は、消息の解らない人たちが溢れている場所だ。
 俺の伯父さんも、石巻を最後に、いまだに行方不明のままなんだ」

 英治と響は、仙台駅で新幹線を降り、在来線の仙石線に乗りかえる。
仙石線は、3.11から一年以上が経ったのに、いまだ復旧工事がつづいている。
海岸沿いを主に走るため、1部で不通の区間が残っている。


 松島海岸駅から矢本駅まで、代行バスによる輸送にかわる。
代行バスは、被害の大きかった仙石線ぞいの国道をひたすら走っていく。
この区間を利用する乗客は、それほど多くない。
大半は地元の客だ。黙ったまま車窓に目をやりながら、バスに揺られていく。


 電車は1時間に2本、運行されている。
だが、臨時便として運用されているバスは、1時間に1本だけだ。
待ち時間も含めると、仙台から石巻までの移動は、2時間半ほどかかる。
宿泊を予定した場所へ到着したのは、もう、日が暮れる寸前で
町には夕闇が降りかけていた。