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人でなし(?)の世界にて

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 リザードマンはそのスキを逃すことなく、反撃に移る。大統領とSPに向かってジャンプするリザードマン。長く鋭いツメは、電灯でほのかに輝いている。
 大統領とSPは、迎えうつ暇もなく、同時に首無し死体となった……。胴体と別れを告げた2つの生首が、バスケットボールのようにバウンドして転がっていく。

「オゥマイガ!!!」
銃声を聞いて駆けつけてきた他のSPや軍人たちが、転がってきた2つの生首に、思わず飛びあがって驚く。当然の反応だが、その驚いているスキを、リザードマンが見逃すはずは無かった……。

 パニックに陥った文官や乗員たちが、必死に機内を逃げ惑っている間に、SPや軍人たちは斬殺死体となった……。その場は血の海と化し、機内に血の匂いが充満する。その匂いが、まだ生き残っている機内の人間を、さらなるパニックに追い込む。
 だが、彼らが今いるのは、空高く飛んでいる飛行機の中だ。まずどこかに着陸しなければ、それ以上逃げようがなかった。しかし、燃料の残りは少なく、着陸場所を選んでいる余裕は無い。
 SPや軍人たちの死体を乗り越えたリザードマンは、そんな逃げ惑う人々を次々に殺していった。護身用のピストルや鈍器で、果敢にも抵抗する者もいたが、わずかな時間稼ぎにしかならなかった。

 まだ生き残っている人々は、頑丈なドアで守られているコクピットに逃げ込んだ。パイロットの機長は、燃料の残りを気にしながら、着陸できそうな場所を、必死に探している。いつでも着陸できるように、操縦は手動にしてある。
 だが、タイミングが悪いことに、窓越しに見える下には険しい山々が広がっていた。これでは着陸など不可能だ。コクピットにいる人々は皆、絶望を顔に浮かべずにはいられなかった。

   ガァン!!! ガァン!!! ガァン!!!

 それをあざ笑うかのように、リザードマンはコクピットのドアをノックしていた……。手の空いている男たちは、最後の関門を守るべく、力一杯にドアを押さえつける。リザードマンはそれに対抗するかのように、必死にドアを破ろうとしていた。
 だが、コクピットのドアの頑丈さは筋金入りの物で、リザードマンでも無理そうだった。それを察知したヤツは、ドアへの攻撃を止める。それから、ドアからゆっくりと離れていった。
 ドアの向こう側にいるヤツが立ち去っていく音を聞いたコクピットの一同は、ひとまず安心した。このままうまくいけば、無事に飛行機から降りて、逃げ切れるかもしれない。希望が湧き上がってくる。

 ――だが、その安心と希望は、一瞬にして消え失せた。コクピットの座席に座っていた機長が、イスから上向きに飛び出してきたものに、下腹部から体を貫かれる。それは心臓にまで貫通し、機長の息の根を止めた。
 イスから飛び出してきたものとは、リザードマンの鋭いツメであった……。ヤツは、コクピットの下にある貨物室から攻撃をしてきたのだ。床の強度は、ドアのそれとは全然違うらしく、ツメが軽々と貫通してしまっている。ヤツがツメを引っ込めると、機長の死体が座席からずり落ちた……。