人でなし(?)の世界にて
その「障害物」とは、水で吹き飛ばされてきたアーノルドであった……。ゴロゴロと転がってきた彼は、カタパルトの軌道上に寝転がる形となる……。
カタパルトに引っ張られている小型飛行機の前輪が、アーノルドに衝突する。その瞬間、アーノルドは破裂した……。血や内臓が飛び散り、骨は粉々になり散骨された……。
デブのアーノルドと衝突したせいで、小型飛行機はバランスを崩してしまう……。しかも、勢いよく飛び散った血がフロントガラスを赤く汚し、視界不良になってしまった。
小型飛行機は飛び立つことができずに、空母から落下していった。そして、海面に勢いよく衝突し、大きな水しぶきを上げた……。
アンドルーズとキャサリンは、アーノルドの死と小型飛行機の離陸失敗を見届けるとすぐに、脱出用のボートを探す。
だが、ボートの数は元々少なく、その少ないボートに人々が殺到していた……。そんな人々に、リザードマンは遠慮なく襲いかかる……。まるで、羊の群れを襲う狼のようだ。兵士たちが応戦するも、大勢のリザードマンにはとても太刀打ちできなかった……。
空母の傾きはどんどん増しており、なんとか立っていられるほどだ。沈没するまで、もうあまり時間はかからないだろう。
アンドルーズは、すぐ近くのコンテナをコンコンと叩く。先ほどの反響音でもわかったが、コンテナの仲は空っぽのようだ。
「キャサリン! このコンテナを使うぞ!」
彼は、この空のコンテナを代わりのボートとして使うつもりのようだ。
「……少し無茶な気がするけど、それしかないわね!」
アンドルーズとキャサリンは、リザードマンに気づかれないよう注意しつつ、コンテナの上に乗った。そして、その場に身を伏せる。
……空母の傾きが急になったのは、その直後だった。甲板に置かれていた航空機が、次々に海へ滑り落ちていく。あの大型輸送ヘリも海に落下し、エンジンの重さで仰向けになって、海中へ沈んでいった。
甲板に残っていたわずかな人々やリザードマンも、海へ滑り落ちていく。海面に落下した両者が、「水上鬼ごっこ」を始めたのは言うまでもない。幸い、リザードマン側はまだ泳ぎ慣れていないため、スピードは互角だった。
アンドルーズとキャサリンを乗せたコンテナも、甲板を滑り始める。コンテナの後ろに上がる火花。2人は転落しないように、しっかり張り付いている。
まもなく、2人を乗せたコンテナは、海面に勢いよく着水した……。
その頃、傾きを増す格納庫では、バーナードが最後の相手となったリザードマンと戦っていた……。死んだヤツらの死体は、傾きによって転がり、一辺に集まっている。また、ここも浸水が始まっており、格納庫に放置されていた物がプカプカと浮かんでいた。
作品名:人でなし(?)の世界にて 作家名:やまさん