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人でなし(?)の世界にて

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 リザードマンは、順番に牢屋を回り、収容者を次々に殺していく……。牢屋の鉄格子の太い破片が、あちこちに転がっている。

 アンドルーズとキャサリンが閉じ込められている牢屋は、出入口から1番離れて場所にあり、2人は留置室最後の生き残りとなった。
 2人がいる牢屋の前に立ったリザードマンは、最後の獲物を前にニヤリと笑っていた……。不気味の一言に尽きる笑みだ……。

 リザードマンは、自慢のツメで鉄格子を易々と破壊する。鋭いツメは赤く染まり、天井の蛍光灯がそれを輝かせていた……。
「キャサリン、おれの後ろに隠れていろ」
「もう隠れてるわよ」
「……時間を稼ぐから、そのあいだに逃げろ」
「わかったわ」
アンドルーズの死を覚悟した提案を、キャサリンは快諾してみせた……。
 リザードマンは、もったいぶった歩き方で、2人に近づいていく。
「さっさとこい!!! おれが相手してやる!!!」
ヤツに飛びかかろうとするアンドルーズ。

「ギャーーー!!!」

 そのとき、通路の向こうから、別のリザードマンの鳴き声が響いてきた。2人の目の前にいたリザードマンは、驚いたような様子で牢屋から飛び出し、鳴き声の主を見た。
 2人に襲いかかろうとしたリザードマンは、おどおどしている。牢屋の中からなので見えないが、偉いリザードマンがいるようだ。
 すると、目の前にいるリザードマンは、2人には目もくれずに、その場から去っていった。何が起きたのかがわからない2人は、黙って顔を見合わせるしかなかった。目の前にある鉄格子が壊れていることも、まるで気づかないようだ……。
 2人が、壊れた鉄格子から逃げられることに気がつくよりも前に、別のリザードマンがやってきてしまった……。立場を利用しての横取りでしかなかったのだろうか……。

「……アンドルーズ……」

 やってきたそのリザードマンは、バーナードであった……。偶然近くを通りかかり、バーナードの声を聞きつけたらしい。
「……バーナードか?」
「そうだ……。オレだよ。バーナード……だよ」
前に会ったのはつい最近だが、アンドルーズとバーナードには、長年の再会のように感じられた。
「……おまえ、なにかやったのか?」
バーナードが牢屋を見回しながら言う。もちろん、これはジョークだ。
「ああ、ちょっと悪ふざけをな!」
笑いながら返すアンドルーズ。今まで何度もあったやり取りだった。