人でなし(?)の世界にて
突然のリザードマンたちの襲撃に、艦内は大混乱に陥った……。
リザードマンたちは、この国の今の首都である空母内で、ひたすら暴れ回る。人々は狭い艦内を逃げ回り、運の悪い者から順にヤツらの餌食となった……。ケガだけで済んだ者は、隔離を恐れて隠れていたが、すぐにヤツらの仲間と化した……。
研究室も襲撃に遭い、オリの中にいたリザードマンは解き放たれた……。研究者たちは、黄色い防護服を赤く染め上げる……。
多くの兵士が眠りについており、あの大口径狙撃銃でリザードマンに応戦できた者は少なかった……。眠気と大混乱のせいで状況を把握できずに、ヤツらの餌食となる兵士が続出する……。
うるさい警報が鳴り始めた頃には、時すでに遅しという状況だった……。
さらに、浸水も人々に襲いかかる。リザードマンを恐れて身動きが取れなくなった者の溺死体が、水中を漂う……。大混乱のせいで、閉じることができた隔壁は少なく、沈没はもはや時間の問題であった……。ただし、沈没の前に、この新首都はヤツらに占領されてしまうことだろう……。
「な、何事だ!?」
「大変です!!! リザードマンに襲撃されています!!!」
寝間着姿のアーノルドは、マッチョ男の報告に慌てふためく。
「ここから逃げるぞ!!! 身支度を手伝え!!!」
彼は、新首都であるこの空母から逃げ出すつもりのようだ……。
空のカバンをいくつも用意し、次々に荷物を中に放り込む2人。水や食料はともかく、貴金属もあった。おそらく、略奪した物だろう……。
アンドルーズとキャサリンがいる留置室にも、大混乱の喧騒は届き、浸水が始まっている。
「ここも終わりか……」
「冗談じゃないわよ。リザードマンに殺されるか溺死するしかないなんて!!!」
キャサリンはあいからわず怒っていた……。
ガシャーン!!!
留置室と外の廊下とをつなぐドアが、勢いよく弾き飛ばされ、牢屋の前の通路を滑っていく。
「ギャー!」
リザードマンが留置室に入ってきたのだ……。
「きゃー!!!」
「あっちいけあっちいけ!!!」
アンドルーズとキャサリンをのぞき、収容者が喚く。つい先ほどまで死人のようだったが、恐怖を目の前にして元気になったようだ……。
作品名:人でなし(?)の世界にて 作家名:やまさん