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人でなし(?)の世界にて

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『選手の入場!!!』

 頑丈そうな小さなゲートから、キャサリンがリングに放り出される。
「何するのよ!!!」
彼女が口走るよりも前に、ゲートはぴしゃりと閉まった。
「何なのよここは!!!」
さらなる熱狂に包まれるスタジアム。キャサリンはうろたえながら、周囲を見回す。彼女の頭上にあるコンテナの中には、獲物に飢えたリザードマンがいた……。


「……やっぱりこんなの間違ってる」
暴力事件の有無は別として、アンドルーズは彼女を救わねばと決意した。いくらなんでも、見世物が目的で、人間とリザードマンを戦わせるなんておかしいと思ったからだ。
 彼の視線の先には、コンテナを吊るしているクレーンがあった。


 気持ち程度の武器として、鉄パイプがリングに投げ込まれる。その直後、コンテナのドアが開いた……。
「ギャー!!!」
コンテナから勢いよく飛び出したリザードマンは、リングに降り立つ。そして、獲物であるキャサリンを睨んだ……。
「こいつと戦えっていうの!?」
後ずさりするキャサリン。
「ギャーー!!!」
雄叫びをあげながら、彼女に突進していくリザードマン。
 ギリギリのところで、彼女はそれを避けることができた。突進を外したヤツは、勢いを止めきれず、高圧電流が流れるフェンスに衝突する。
「ギャ!!!」
強力な電流がヤツの体内を流れる。
 だが、それほど大きなダメージを受けているわけではないらしく、すぐに立ち直って見せる。それどころか、闘争心を増していた。気が強いだけの彼女に勝ち目が無いのは明白だ……。


 キャサリンを救うべく、アンドルーズはクレーンのハシゴを昇っていた。元々は戦闘機の移動に使っていたそのクレーンは、リングの上をまたぐ形で置かれていた。今は空のコンテナを吊り下げている。
 幸いなことに、スタジアムの人々はデスマッチに夢中で、警備の兵隊の視線は、熱狂する人々のほうを向いていた。そのため、臆することなく、クレーンのハシゴを昇ることができた。しかも、軍人である彼は、高いハシゴを急いで昇ることなど朝飯前であった。

 難なくハシゴを昇り切ると、次はリングをまたぐ部分を進み始める。リングでは、リザードマンが攻撃を繰り返し、彼女は必死にそれを避けていた……。