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人でなし(?)の世界にて

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 アンドルーズは、転がり込むように自宅へ飛びこむ。結局、リザードマンとの遭遇は一度も無かった。自宅には強力なショットガンもあるが、これで安心できたわけではない。
 自宅はアパートの5階にあり、間取りは2LDKだ。建物は古くもなく新しくもなくといった感じで、住みやすさはまあまあのものだった。
 リビングの窓の向こうには、大通りが見える。先ほどのメインストリートほどではないが、この大通りも普段は賑やかだ。しかし、今は静寂に満ちている。通りは放置された車でいっぱいだったが、人間やリザードマンの姿は見えない。だが、じきにこの通りにも、リザードマンたちが闊歩し始めることだろう……。

 帰宅したアンドルーズは、すぐにしっかりとした戸締まりを開始した。さらに、化学繊維製の分厚いカーテンをすべて締め切り、外に光が一切漏れないようにした。
 そして、テレビにイヤホンを差し込み、ニュースチャンネルをつける。テレビ画面には、緊迫した表情と口調の男性アナウンサーが映る。額には汗が流れており、全国各地のテレビ局もリザードマンの攻撃に晒されているようだ。ときどきいっしょに聴こえてくる雑音や声から、大混乱の中、決死の生放送をしているのだということがわかる……。
『繰り返します! 外に出ないでください! 外は危険です! 感染者との接触は避けてください!』
イヤホンで聴いてみると、アナウンサーが早口で何度も同じことを喋っていた。詳細な情報を入手するのが困難になっているようだ。

 アンドルーズはイヤホンを耳から外すと、そのままテレビをつけっぱなしにした状態で、家の中の物の確認を始めた。当分の間、買い物ができないことは明白なので、日にちをうまく持たせなければならない。
 最初に確認したのは、水と食料だ。幸いなことに、これらは普段から備蓄をしていたので、数日間は余裕で大丈夫であった。だが、長引いたことを考え、どれぐらい持つのかを再計算した。
 次に確認したのは、自宅に保管してある武器の点検であった。軍人である彼は、何丁かの銃やたくさんの銃弾を保管してあった。もちろん、メンテナンスはしっかりされており、いつでも使える。ただし、硬いウロコを持つリザードマンに通用するかどうかは、まだ未知数であった。
 その他にも、サバイバルに役立ちそうな日用品も確認した。たとえば、サランラップやビニール袋だ。これらはたくさん保管しているわけではなかったが、当面の分はある。

 物の確認を終えたアンドルーズは、戸締まりの念入りな最終チェックをする。まるで強迫観念に取り憑かれているようだが、生死が懸かっているのだから、これは当然の行動だ。
 夕日が、カーテンの隙間から室内に差し込んでいるのを見つけると、カーテンとカーテンとをガムテープでつなぎ留めて、わずかな隙間も排除した。

 ようやく、家の安全を確認し終えたアンドルーズは、すっかり疲れ果てていた。そのため彼は、まるでゾンビのような足取りでベッドに向かうと、そのままベッドに倒れこんで眠り始めた。
 リビングの点けっぱなしのテレビでは、アナウンサーが先ほどと同じ言葉を何度も何度も、必死に喋り続けていた……。