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人でなし(?)の世界にて

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第4章 箱舟



 避難船になっているその空母は、大平洋の沿海にポツリと浮かんでいた。原子力空母である軍艦は、ウィルスで世界が壊滅する前まで、国の威信を背負っている存在だった。ただ、外交の道具の一種として使われるほどの威圧感は、今も衰えていない。
 船の上とは思えないほど広い甲板には、戦闘機やヘリコプターなどの航空機だけでなく、非常用の小型消防車まである。滑走路1本を残し、甲板はそれらで埋め尽くされていた。民間の航空機は、避難者が乗ってきたもののようだ。
 また、原子力のおかげで、エネルギーはあまり問題ではない。


 アンドルーズとキャサリンは、小型ボートからこの空母に乗り移る。甲板に昇っているときに振り返ると、遠くに沿岸の街が見えた。
 縄バシゴで甲板に上がると、近くにいた老夫婦が近寄ってきた。
「アンタも運が良かったな!」
「街はひどかったでしょ?」
どうやら、この老夫婦も救助された生存者らしい。服装はボロボロだが、表情はイキイキしていた。
「よし! それでは、新大統領のほうへ案内するぞ! ついてこい!」
先ほどのマッチョ男が、アンドルーズたち生存者にそう呼びかけた。
 彼の先導で、アンドルーズたちは艦内に入る。
「……新大統領?」
「最近、大統領選挙なんてあったかしら?」
アンドルーズとキャサリンが首をかしげていると、すぐ前にいた老婆が、
「大統領は避難中に亡くなられたらしいわ」
と、教えてくれた。
{すると、当時の副大統領だな}
アンドルーズは歩きながら、ウィルス騒動前の副大統領の顔と名前を思い出そうとしていた。


 アンドルーズたちが案内されたのは、この空母の艦長室であった。その部屋のデスクには、太った初老男性がいた。海軍の将官服を着ている彼は、副大統領ではなかった。
 イスにドカンと座っている彼は、マッチョ男に連れられた彼らが部屋に入ると、ゆっくり立ち上がる。
「ようこそ! 我が艦および新首都へ!」
彼は、歓迎のあいさつを口にする。
「私の名前は、アーノルド! この国の新大統領です!」
アーノルドという名前の彼は、そう自己紹介をした……。それはジョークではなく、真剣のようだ……。

 だが、アンドルーズたちは、目の前にいるこのデブ男が、自分たちの国の大統領になっていることを信じられずにいた……。
「ゴホンゴホン!」
気まずい空気になりつつあるのを感じたマッチョ男が、咳払いをする……。