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人でなし(?)の世界にて

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 ようやく、港のクレーンが見えてくると、車内の2人は喜びの声をあげた。もうすぐ救助地点に到着できる。安全な暮らしがやっと手に入るわけだ。

「あいつら、しつこいわね!」
「このまま港まで突っ走るしかないな」
「当たり前よ!」

 リザードマンたちはあきらめることなく、アンドルーズとキャサリンが乗る車を追いかけ回している。よほど、獲物に飢えているらしい。
 もし救助地点が避難者でいっぱいだとしたら、無関係な彼らを危険に晒すことになる……。しかし、ここで車を乗り捨て、全力疾走したとしても、ヤツらに追いつかれてしまうだろう。
「現地の兵隊さんたちに任せるしかないわ」
「おれも一応、軍人なんだけどな」
「あら、そうだったの」

 猛スピードで走りつつ、ときどき急ハンドルを切って、港の倉庫街の中をジグザグに進む。これで、追っ手のリザードマンを振り切るつもりだ。
 何匹かのリザードマンは曲がり切れずに転倒してくれたが、残りの何匹かは手強い。救助地点であるふ頭に着くまでに、すべて振り切るのは無理そうだ。ここは現地に、リザードマン退治に慣れた優秀な兵士がいることを期待するしかない……。

 そして、車は倉庫街を抜けて、救助地点であるふ頭に出る。リザードマンの追跡者は3匹だ。
 ふ頭は、土壇場の大騒動の後という感じを醸し出していた……。ある程度の惨状は予想できていたが、現実に目の当たりにすれば、驚きは隠せないものだ。

 停泊していた船は黒焦げになっており、係留されたまま虚しく浮かんでいる……。避難者を乗せていたと思われるバスは、鋼鉄製のクレーンの柱に衝突して、前部が完全に潰れている。船での避難者を整列させていたフェンスは、あちこちでバタバタと倒れている。
 そして、散乱する人体の一部や荷物や、地面を赤く染める血……。

 そんな中、少し離れた沖合に浮かぶ小型ボートとそれに乗る兵士たちを発見することができた……。また、幸か不幸か、救助地点に他の人間の姿は無かった。
 それは幻覚ではなく、アンドルーズとキャサリンは、自分たちがこれ以上ないほどの幸運の持ち主に思えた。だが、手放しでは喜べない。リザードマンの追跡は続いているのだ。
 アンドルーズは、その小型ボート目がけて、全速力で車を走らせる。車を止めている余裕など皆無だ。それに、小型ボートにいる3人の兵士が、自分たちも危険だと判断すれば、救助などしてくれないだろう。
「このまま海に飛びこむぞ!」
「おニューの服なんだけど、仕方ないわね」
キャサリンの了解を取り付けたアンドルーズは、エンジンが焼け落ちそうなほど、アクセルを強く踏み込んだ。