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人でなし(?)の世界にて

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 ところが、同じような車の壁があったり、障害物で塞がっていたりと、代わりとなる道路はなかなか見当たらなかった。このままではいつまで経っても港にたどりつけないのではないかと思い始めた頃、近くの都市公園の芝生に目が止まった。アンドルーズは車を止める。
 新緑溢れる公園の芝生に、車のタイヤ跡が残っていた。土をえぐったその跡は、少し離れた奥にある公園の林の中へ消えている。この公園の中を無理やり走った車があるのだ。それも、ついたばかりの跡のようだった。もしかすると、港へ向かった車で、公園を通り道として使えるのかもしれない。この公園はあまり大きな公園ではなかったはずなので、すぐに通り抜けられるだろう。
 ただ、薄暗い林の中を通るので、アンドルーズは躊躇する。だが、これ以上遠回りに無駄な時間は使いたくなかった。まだ昼を過ぎたばかりだが、日没を過ぎると、周囲は真っ暗になるだろう。また、救助自体が終わってしまうかもしれない。

 覚悟を決めたアンドルーズは、アクセル全開で公園の中に入る。芝生にタイヤ跡を刻み込んでいく。スポーツカーの馬力があるエンジンのおかげで、彼の車はグングン進んでいく。
 そして、問題の林の中に入った。「先客」のタイヤ跡は、チラリと見える程度だ。それを頼りに、林の中を走る。何度か木にぶつかりそうになったが、一々驚いている余裕は無い。ひょっとすると、木の上で昼寝しているリザードマンがいるかもしれない。

 幸いなことに、木にぶつかることもリザードマンに遭遇することもなく、林を抜けることができた。目の前に公園を囲む木の柵があったが、前の車が壊していった部分を通り抜けることができた。どうやら、その車のドライバーは乱暴な運転をする人物らしい。
 ともあれ、これで公園を通り抜けられたというわけだ。


 公園を出たところは、灰色の古臭いアパートが建ち並ぶスラム街だった。誰もいなかったが、物騒な空気が漂っている。だがこのスラム街は、港に近い場所だったので、ここは喜ぶべき場面だ。

「誰か助けて〜〜〜!!!」

 ……どうやら、呑気に喜んでいる余裕は無いようだ。助けを求めるその叫び声は、若い女性のものらしく。すぐ近くからだった。それも何度もだ。
「正義の味方になる予定は無いんだけどな」
アンドルーズはそう呟きつつ、叫び声がしたほうへ車を急がせる。


 叫び声がする場所に着いてみると、1台のSUVが電柱に衝突していた。そして、その車の屋根には、若い女性が1人立っており、車の周囲を数人の男たちが取り囲んでいた……。
 その女性は、長い金髪をたなびかせている美女だった。顔もスタイルも抜群だ。それに対して、彼女を取り囲んでいる若い男たちは、むさ苦しい外見のヤツばかりだった……。
 このわかりやすい状況から察するに、この金髪美女は、男たちに今にも捕まりそうになっているようだ。ワンピース姿の彼女は、車の上から必死にハンドバッグを振り回している。
 ここは助けてやらねばならないだろう。アンドルーズはショットガンを手にすると、車から降りた。