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人でなし(?)の世界にて

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「……アンドルーズ……か?」

 絞り出すような人間の言葉を、そのリザードマンが喋った……。
「え?」
聞き間違えかと、アンドルーズは間抜けな声をあげる。
「オレ……だよオレ。アンドルーズ……。オレは……バーナードだよ」
じれったい喋り方だが、聞き間違いでないことがわかったアンドルーズは、リザードマンが人間の言葉を喋ったことに愕然とする。
 ただ、それと同時に、バーナードと再会できたことを喜んだ。シュールな光景かもしれないが、感動の再会というやつだ……。

 ところが、他のリザードマンたちは、お涙頂戴の場面に感動することは無く、車への攻撃を始めた。助手席の窓ガラスが粉々に割れ、ドアがひしゃげる。
「ギャーーー!!!」
今はリザードマンであるバーナードが、他のヤツらに向かって鳴き声をあげた。
 その途端、他のヤツらは攻撃を止めた……。ただ、不満そうな様子を見せている。そこで、バーナードがまた鳴く。
 すると、ヤツらはいっしょに町のほうへ退散していった。

「オレの……手下たちさ……」
最後尾のリザードマンが門の向こうへ消えた後、バーナードが言う。彼は、運転席に座っているアンドルーズのすぐ横に立っている。
「そうなのか。出世したな」
アンドルーズがそう言うと、バーナードは寂しげに、
「もう……元には戻れないだろうからな。……リザードマンとして……精一杯生きていくよ……。人間の言葉を喋れることぐらいは……神に感謝しなくちゃな」
言葉を振り絞った……。
「バーナード……」
親友であるバーナードの寂しげな様子に、彼も寂しくなる。
「どうだ? おまえもオレたちの仲間にならないか? 人間のままでは無理だが?」
「え?」
バーナードの突然の勧誘に、戸惑うアンドルーズ……。
「冗談だよ! 冗談……!」
人間時代と変わらない調子で喋るバーナード……。
「やれやれ、姿が変わっても中身は変わらないな」
アンドルーズが苦笑いしながらそう言った後、彼とバーナードは同時に笑い出す。その光景は、一昔前のそれと変わらないといえた……。

「そういえば、オマエはどうしてこんなところに? これからどこかに行くのか?」
バーナードの問いかけに、アンドルーズはどう答えるべきかで迷った。今はリザードマンであるバーナードを、救助地点に連れていくことはできない……。現地の人間に、このリザードマンは安全なんですと説明しても納得してくれるわけがなかった。悲しいことだが、バーナードとは、ここで別れるしかないのだ。