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人でなし(?)の世界にて

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 それからの日々を、アンドルーズは自宅で退屈そうに過ごしていた。外が危険であることは言うまでない。そのうえ、まだ少しは機能していたテレビやネットは、暗い内容一色で染まりきっており、見る気が少しも沸かなかった。
 備蓄の食料や水の節約も兼ねて、ひたすら寝てみようとした。しかし、目が完全に覚めきってしまうと、もはや一睡もできなくなる。そうなると結局、起きている時間はプラスマイナスゼロとなってしまう。

 そんな生活を過ごしていたある日の晩、突然停電が起きてしまう……。こっそりとつけていた小さな電灯が、アンドルーズの頭上でプツンと切れた。
 ちょうどディナーを食べていた彼は、暗闇の中を慎重に歩いて、配電盤を見る。しかし、そこに異常は無かった。どうやら、送電自体が止まってしまったようだ。そこで彼は、非常用のロウソクを灯すことにした。部屋がほのかに明るくなる。
 暗闇を解決するのに時間がかかってしまい、せっかくの温かい夕食を冷ましてしまった。美味しく食べるために温め直そうにも、電子レンジは当然動かない。
「電気代は払っているはずなんだけどな……」
うんざり顔の彼は、カーテンの隙間から外を見る。

 予想できていたことだが、この街全体が停電していた。普段は光り輝く超高層ビルがいくつか見えるが、今は闇夜に深く沈んでいる……。
 街全体の輪郭を、月明かりと火災の炎がほのかに照らしている。まるで、中東の激戦地のような夜であった。違う点は、サイレンが鳴り響いていないことぐらいだ。

 この街の電力は、はるか郊外にある原子力発電所から送られてきているのだが、そこで何かあったのだろう。もしかすると、リザードマンによる襲撃を受けて、事故が起きてしまったのかもしれない。または、安全装置が自動的に働き、発電を停止したのかもしれなかった。
 どちらにしろ、原因の確認と復旧のために現地へ向かう気など、アンドルーズには起きなかった。情けないことかもしれないが、どこかのヒーロー気取りの活躍に期待するしかない。
 彼は、根拠の無い期待心を胸に抱きながら、もう点くことは無いであろう電灯を見上げる。


 停電のせいで、少しだけ残っていた冷蔵庫の品々は、すぐにダメになった。製氷皿には、とけた水が溜まっている。もし食中毒になっても、医療体制がもう死んでいるので、命に関わる。名残惜しいが、そのまま捨てるしかなかった。
 さらに、水を送っていたポンプも停電で止まり、断水が起きてしまう。どこかで水汲みをしてくる必要があるが、危険極まりない。おまけにガスも止まり、湯も沸かせなくなった。
 ライフラインが、完全に死んでしまったのだ……。