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人でなし(?)の世界にて

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 そのこともあり、水と食料は残り少なくなってしまった。おまけに、もうじき暑い夏がくる。
 このままここに閉じこもっていたら、餓死か衰弱死かを待つだけだ。リザードマンになるよりかはマシだが、間抜けな死に様だろう……。
 そんなある日の午後、アンドルーズは、携帯ラジオの周波数をいじりながら、水と食料をどうやって集めるべきかを考えていた。強力な銃があるとはいえ、リザードマンとの遭遇はできるだけ避けねばならない。
 携帯ラジオは、自動音声やノイズを発し続けていたが、明瞭な声をいきなり放ち始めた。周波数をいじっていた彼の指が止まる。

『……繰り返します。こちらは空母『ハルゼー』です。生存者の方は、オークランド港のふ頭にお集まりください。軍がそこで救助いたします』

 女性がそう呼びかけていた。録音による声でないことは、すぐにわかるような自然さだ。このサクラメントの街からオークランド港までは、そう離れていない。すでに機能していないと思われるハイウェイを走らなくても、たどり着けるだろう。
 ただ、そのアナウンスがイタズラではないという証拠は無かった。混沌でおかしくなった女が、妄言をぶちまけているかもしれない。しかし、真実だとすれば、これ以上の幸運はもう来ないだろう。
 アンドルーズは、判断に迷いながら、窓の外をのぞく。

 ――窓の外に広がる街は、完全に死んでいた。太陽はまだ空にあり、夜闇に沈んでいるわけではなかったが、街に明るさは無い。
 火災による煙が、街のあちこちで上がり続けている。人間の悲鳴や銃声はもはや聞こえてこず、リザードマンの鳴き声が何度も聞こえてくる。まるで深いジャングルにいるようで、そこに文明らしさは全く感じられなかった……。この州の州都であったサクラメントの街は、もうおしまいだろう……。

 そんな死の街を見たアンドルーズは、アナウンスを信じて、港へ向かうことを決意する……。彼は、車のカギを手にすると、自宅を後にする準備を始めた。