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人でなし(?)の世界にて

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 退屈さに早くも耐えられない様子のアンドルーズは、そっと窓から、自宅周辺の様子を伺うことにした。もちろん、慎重にだ。
 アパートの自宅周辺は、相変わらず静寂に支配されていた。ときどき、遠くから銃声が鳴り響いてくるが、それ以外は静かなものだ。変な寂しさを感じる。
 だが、リビングの窓から、通りをふと見た彼は、思わず息を飲んだ……。

 20匹近くのリザードマンたちが、音を殺しながら通りを進んでいた……。整列しているわけではなかったが、一定の統率が取れているような感じがする。だが、殺気に満ちたヤツらは、人間ではなく獣だ。ヤツらの目つきは、殺しに飢えているのだという印象を受ける。
 そのとき何かを聞きつけたのか、リザードマンたちは、一斉に立ち止まる。そして、周囲の様子をギロリと見渡す。何かを探しているようだ。
 アンドルーズは、自分の存在がバレてしまったのかと、窓からサッと離れ、床にしっかりと伏せる。死の恐怖に、呼吸が一気に激しくなる。心臓はバクバク動く。
 しばらくその場に伏せていると、通りから金属を斬り裂く音が鳴り響いてきた。自分がいるアパートを攻撃しているわけではないようだったので、アンドルーズは一安心できた。
「だ、誰か!!! たすけ、助けてくれー!!!」
ところが、通りから聞こえてきた悲痛な叫び声に、その一安心は吹き飛ばされる……。
 気になったアンドルーズは、窓の端からそっと通りを見ることにした。もちろん、今のような悲鳴を自分があげることにはならないよう、細心の注意を払っている。

 哀れな若い男が、放置されたシティーバスの中で慌てふためいていた……。どうやら、そのバスの中に隠れていたようだ。
 リザードマンたちは、そのバスを取り囲み、車体に攻撃を加えている。男はバスの中を右往左往しながら、ひたすら悲鳴をあげまくっている。男には悪いが、アンドルーズにはどうしようもなかった……。
 バスはどんどん破壊されていき、とうとうバスの真ん中あたりに、リザードマンが入れるぐらいの穴ができてしまった……。その穴からバスの中へ突入していくリザードマンたち。悲鳴のボリュームをあげながら、バスの最後尾のほうへ逃げていく男。もう決着はついてしまっている……。
 それから数秒後、一瞬だけの男の断末魔が聞こえてきた……。バスの周囲にいたリザードマンたちは、その断末魔を待ちわびていたかのごとく、雄叫びを次々にあげる……。

 残酷な一部始終の見物者となってしまったアンドルーズは、両手で顔を押さえながら、窓から離れていく……。彼は心の中で、罪悪感と恐怖心を相手に戦っていた。だが、この2つは、リザードマンぐらいの強敵だ。

 しばらくして、心の中での戦いに疲れたアンドルーズは、ソファーで昼寝をし始める。どうせすることは特に無いのだ。
 リザードマンたちは、彼が疲れた表情で寝ている間に、通りからどこかへ立ち去っていった……。傷だらけのバスの中から、男の血が静かに流れ出ている……。男にとって幸いだったのは、ヤツらの仲間入りはせずに済んだことぐらいだ……。