愛されたがりや
私は電話を諦めて、メールを送ることにした。
これなら、夏樹だって無視はしないだろう。
『夏樹へ。今朝、父が亡くなったという知らせがきたので、これから実家に行ってきます……。
そのことを伝えたくて、さっき電話したんだけど……。仕事中だった?って、あたり前だよね(笑)。
ごめんなさい……(涙)。あとね、2〜3日は帰ってこれないと思うんだ。色々とあると思うから……。
でもね、連絡だけはいつでも取れるようにしておくからね。夏樹の声、聞きたいから。あっ?でも、もし連絡がつかない時があったら、その時は許してね(笑)。
じゃ、また連絡します。 翔子』
未練たらたらな文章。
このメールを見て、果たして夏樹は返事をくれるだろうか、と不安になるも、私はすぐ思い直す。
夏樹のことだから、私を心配してすぐに返事をくれるはず、と。
だから、さっきだって故意に電話を切ったんじゃなくて、仕事が立て込んでいたから泣く泣く電話を切らざるを得なかっただけ。
ただタイミングが悪かっただけ。そうよ。
きっと、そうよ。私が電話を掛けるタイミングを間違ってしまったから、電話が切れてしまっただけ。
ただそれだけ。
だから、深く考えることなんてないのよ。
それなのに、私ったらバカみたい……。
夏樹に怒られちゃうかな。
考えすぎるところが私の悪い癖だって、いつも夏樹に注意されていたのにね。
もう私ったら、ホント、バカなんだから……。
そんな妄想を繰り広げ、自分を慰めた。
ポジティブすぎる妄想。
そんなことくらい分かっている。
けれど、今の私にはとても必要なこと。
だって、そうしないと私はダメになってしまうから―――。