愛されたがりや
すぐに夏樹から返信が来た。
夏樹は、私のことを心配してくれたのだ。
だから、こんなに早く返信をくれた。
そう、はやる気持ちを抑えながら、私は急いでメールを見た。
『お前、最低だな。俺と別れたくないからといって、親を使ってこんなことするなんて。もう二度と、連絡してくんなよな!』
都合よく、親が死んでしまったのだから仕方がない。
けれど、そのことによって余計夏樹の心は私から離れてしまった。
言い様もない虚しさが、私を襲う。
イヤだよ……。夏樹と別れるなんて。アタシ、別れたくないよ……。
涙でぼやけたメール。
その文字がもっと見えなくなる前に、急いで返事を書いた。
『さっきのメール、冗談じゃないの。本当なのよ。お願い。信じて、夏樹?』
の言い訳メール。
けれど、リターンメールが届く。
この短時間に、夏樹はアドレスを変えてしまったのかそれとも拒否設定をされてしまったのか。
目の前が真っ暗になった。
そして、目眩と耳鳴りが私を襲った。
誤解されたまま、私は実家に帰らなくてはならない。
それも、誤解されたままこのまま会えなくなるかもしれない。
そう思ったら、居ても立ってもいられずすぐに電話を掛けた。
けれど、メールと同様、着信拒否になって繋がらなかった。
夏樹のあからさまな拒絶に、そんな……、嘘でしょ……?と呟きながら、私は崩れ落ちた。
受け入れ難い現実に戦慄が走った。
頭が真っ白だった。
今にも壊れそうな心。
いや、もう壊れているのかもしれない。
その脆くなった心に、現実が容赦なく激突してくる。
それらが幾度となくぶつかってくるたびに、私の心は幾重にも亀裂が生じては綺麗な模様を作り上げる。
けれど、それももう少しで粉々に砕け散る寸前だった。
鋭い衝撃は、私に痛みを与えなかった。
痛みに慣れたのではない。
深い深い絶望感が、私を飲み込んでそして痛みを和らげたのだ。
だから、今にも崩れ落ちそうになりながらでも、かろうじてここにいる。
私の中に――――。
しかし、だからといって惨(むご)い現実は変わらない。
着実に私を蝕(むしば)んでいた。こうなった原因なら、知っている。
父だ。
全てが、父のせいだ。
私が夏樹と別れることになったのも、そしてその原因を作ったのも。
そのせいで私が傷を増やしたことも――――。
こんな時に死ぬから。
勝手に、訳も無く死ぬから、私の人生がめちゃめちゃになったじゃない。
どこまで、私の邪魔をすれば気が済むっていうの?いつまで――――。
父との確執は、父が亡くなった今でも広がり続ける。
たぶん、父との不和はどんなことがあろうとも、もう元には戻らないのだろう。
だって、私は父を許すことはないのだから――――。