ニューヨークトリップ 2
こんな人気がない日があるのだろうか。
マキさんは、旅先でマグネットを買い、集めるのが趣味だそうだ。
マグネットをいくつも買っていた。
スーパーで、お土産買うと安いよと言われ、スーパーでエコバッグを購入。
海外のスーパーには珍しい物も沢山あり、見ているだけでも楽しい。
「マキさんの旦那さんは理解のある人ですね。」
結婚しててもそうやって海外に1人で来るのを許してくれるのだから。
「旦那の事、もう好きじゃないのかもしれない～。別れようか迷ってるの。」
と、調味料を選びながらぼやいていた。
それからマキさんは、日本に帰った。
あれからどうなったのだろう。
レッスンを受けようとAスタジオに来ると、前のクラスがやっている。
あの子日本人かな？
ずっと笑顔でダンスが本当に好きなんだろうと伝わってくる。
そのまま入れ替えになり、その子はまだ居たので、勇気を出して話し掛ける。
「Are you Japanese?」
その子は少し驚いた表情で、
「Sorry.No.」
また違った。恥ずかしい。
「But… I love Japan!!」
彼女は、20歳でミアちゃんというカナダ人の女の子だ。
お父さんは日本人、お母さんはカナダ人のハーフだ。
日本のアニメとジャ○ーズが大好きで、とても詳しい。
とても明るく気さくで良い子だ。
「テゴマ○の手○クン、トテモカワイイ！！」
日本語はあまり話せないが、かなり親近感が湧く。
日本の話で盛り上がる。
「あの人、山Pかと思って、山Pですか？って話しかけちゃったの。」
すぐ隣にいる彼は、確かに、似ている。
そちらを見ると目が合い、思わず。
「日本人？」と聞く。
「台湾人。」
台湾人だけど、日本語？
「日本語話せるの？」
「少しね！」
日本人から見ると、やはり日本人ではない気がする。
色黒で、アジアのタイの様な雰囲気もあり、エキゾチックな瞳に吸い込まれそうになる。
「このジャズヒップの先生のレッスンは本当に人気ななのよ！」
ミアちゃんが言うと、間も無く体格の良い女の先生が現れる。
レッスンが始まり、ストレッチをしている時、台湾人の彼の方を見ると、前屈が苦手な様だ。
体は硬そうだ。
それを見て、ミアちゃんがクスクス笑う。
彼は、こっちを気にしながらストレッチし、たまにふざけて舌を出す。
年下なんだろうか。
彼はどんなダンスをするのだろう。
先生が、「ここからの振りは、自由よ！あなた達が感じたままに踊りなさい」
振りがないのか。どうしよう。自分で人のマネしてばかりで、自分で考えるのは苦手だ。
人数か多いので3つのグループに分かれて踊る。
音楽がかかり、目線は彼を追ってしまう。
時が止まったみたいだった。
彼のショーを見ている様だった。
柱にもたれかかりながら、手を柱に絡ませたり、しゃがみながら、しなやかで力強く、妖艶な動きをする。
女性的なダンスを筋肉質の彼が踊るのがたまらなくセクシーで、表情も目を閉じているのだろうか。
まるで音楽に溶け込んでる様だ。
切ない曲での彼の切なそうな表情や動きが頭から離れない。
何度も頭の中でリプレイされる。
「恋しちゃったかもしれない。」
部屋に戻り、かよちゃんにそう言うと、
「ホンマに！？誰なん？」
「台湾人で、ダンスがめちゃくちゃ上手くて…」
私は…彼の名前も年齢も職業も何も知らない。
ニューヨーク近代美術館、通称MOMAは、撮影も大丈夫で、かなり興味深い作品が多かった。
古典的な物より、現代美術の斬新なアートが好きなので、かなりワクワクするような作品ばかりだ。
絵画だけでなく、写真や展示物も多く、発想も新しい物ばかりで、夢中になってその世界にどっぷり浸かった。
その瞬間に疲れもストレスも吹き飛ぶ。
機内でお世話になった紳士に勧められた、グッゲンハイム美術館は、建物の作りもカタツムリの様で、中も螺旋状に登って行く仕組みだ。
大きなリュックを背負っている私は怪しくみえるのだろうか？
荷物を預ける様に言われたが、言葉があまり理解出来ないので、どうも信用しきれず重いまま登った。
個々の部屋になっている展示室は、異空間の様だ。
暗闇の中で、映像のアートを見ていると、どこか知らない世界に来た様だ。
斬新な世界観に刺激を受けた。
ミュージアムカフェもお洒落な雰囲気で、そこで頼んだホットチョコレートの味が今でも忘れられない。
何気無く飲んだのだか、チョコ好きにはたまらなく格別な味だった。
今でも日本でその味を求めて、色々なカフェやらでホットチョコレートを頼んでみたりするのだか、なかなかそこまでの味は再現出来ない。
アメリカのチョコは甘くて有名だけど、チョコ中毒の私には幸せなひとときだ。
場所や場面も特別だったからかもしれないけれど。
それからは、レッスンに行けば、すぐに彼の姿を探してしまう。
見当たらないとガッカリしてしまう。
今日はハウスのレッスンを受けよう。
始まるのを待っていると、スタジオに入ってくる彼の姿を見つけた。
胸が一気に高鳴る！！
私は、会える事を本当に待ち望んでいたのだけれど、それを必死に隠し、冷静なふりをする。
お互い目が合い、軽く会釈する。
私の鼓動が早くなる。かなり舞い上がっていた！
何か話したいけれど、話しかけられない。
音楽がかかるとコテコテのヒップホップだ。
！？
またクラスを間違えたのだろうか。
しかも、かなりのハイレベル。
今まで、受けたレッスンとはまるで難しさが違う。
きっと上級者クラスだ！
振りにも全くついて行けず、焦りと恥ずかしさと動揺で、パニックだ。
「このクラスは、ちょっと難しいよ。」
困っていた私に優しく彼が話しかけて来てくれた！！
嬉しさと恥ずかしさとで動揺してつい早口になってしまう。
「私は、ハウスのレッスンを受けたかったのに、何でヒップホップなの？何で？」
彼は困惑した表情を見せた。
彼を困らせてしまった。
自分の変なダンスを見られるのは恥ずかしいが、彼のダンスをまた見る事が出来る。
かなりの難易度と早さについて行っている。
ヤバイ！！カッコよすぎる！！！
ターンが一回、逆回りになっている所があるが、そこはそこでかわいらしいと思ってしまう。
もちろん皆ハイレベルの人達が集まっているので、皆カッコ良いし、集団で踊るとかなりの迫力だったが、彼以外目に入らない。こっそり見てるだけで幸せだ。
レッスンの終わった後、彼は友人らしき男の子と一緒に居た。
「いつ日本に帰るの？僕達はもうすぐ帰る。」
思いがけず、彼の方から話し掛けて来てくれた！
色々もっと話したい！
女の子の方から食事に誘ったりするのは、アメリカなら珍しくない事なのだろうか。
思い出に、彼が帰る前に一緒に写真を撮ったりしたいな。
話したい気持ちとは裏腹に、彼は、スタジオから出て来た先生の元に行ってしまう。
英語で会話して、握手している。
あの先生も有名な先生なのだろうか。
またチャンスがあったのに何も話せなかった！
それからは、いつもまたスタジオで彼の姿を探す。
作品名：ニューヨークトリップ 2 作家名：虹花