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新撰組異聞__時代 【前編】

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 出会いは数ヶ月前。市中で昼間から暴れる不逞浪士に、思わず応戦したのが始まりだった。幕府の見方をする気かと睨む彼らに、歳三の態度は気にいらなかったらしい。
 「俺はどっちの見方をする気はねぇが、むやみに剣を振り回すバカに黙ってられなくてな」
 そう云って、フンと鼻を鳴らしたのだ。
 攘夷を叫ぶのは勝手だが、誰これとなく襲うのは辻斬りと大差はないと。
 そこに、助太刀として小五郎が加わった。
 「まさか、あなたと会うとは思わなかったな」
 「あの時は、礼を云ってなかったな」
 「礼なんていらないよ。私も、ああ云う連中は好きじゃない。しかし、初めて見たよ。あの太刀筋、どこの流派だい?」
 「天然理心流さ」
 「聞いた事ないな」
 「だろうな」
 杯を口に運びながら、歳三はふっと笑った。
 「___君も、参加するのかい?」
 「?」
 「小耳に挟んだんだが、幕府は浪士を募っているそうだ」
 「異国と、喧嘩でもおっ始めようっていうのか?」
 「いや、家茂公の警備らしい。上洛の為の」
 歳三の手が、止まる。
 「へぇ…」
 勇が聞いたら、飛んで喜ぶ話だ。
 歳三は、この時小五郎の話を軽く聞き流すに務めた。
 「土方さん、これは私の勘だが、君とはまた会う気がする」
 「じゃまた、酒でも呑もうぜ。ゆっくりとな」
 「ああ、呑もう」
 小五郎の勘は、これから数年後当たる事になるのだ。皮肉な再会として。