新撰組異聞__時代 【前編】
3
出会いは数ヶ月前。市中で昼間から暴れる不逞浪士に、思わず応戦したのが始まりだった。幕府の見方をする気かと睨む彼らに、歳三の態度は気にいらなかったらしい。
「俺はどっちの見方をする気はねぇが、むやみに剣を振り回すバカに黙ってられなくてな」
そう云って、フンと鼻を鳴らしたのだ。
攘夷を叫ぶのは勝手だが、誰これとなく襲うのは辻斬りと大差はないと。
そこに、助太刀として小五郎が加わった。
「まさか、あなたと会うとは思わなかったな」
「あの時は、礼を云ってなかったな」
「礼なんていらないよ。私も、ああ云う連中は好きじゃない。しかし、初めて見たよ。あの太刀筋、どこの流派だい?」
「天然理心流さ」
「聞いた事ないな」
「だろうな」
杯を口に運びながら、歳三はふっと笑った。
「___君も、参加するのかい?」
「?」
「小耳に挟んだんだが、幕府は浪士を募っているそうだ」
「異国と、喧嘩でもおっ始めようっていうのか?」
「いや、家茂公の警備らしい。上洛の為の」
歳三の手が、止まる。
「へぇ…」
勇が聞いたら、飛んで喜ぶ話だ。
歳三は、この時小五郎の話を軽く聞き流すに務めた。
「土方さん、これは私の勘だが、君とはまた会う気がする」
「じゃまた、酒でも呑もうぜ。ゆっくりとな」
「ああ、呑もう」
小五郎の勘は、これから数年後当たる事になるのだ。皮肉な再会として。
作品名:新撰組異聞__時代 【前編】 作家名:斑鳩青藍