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新撰組異聞__時代 【前編】

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 文久三年。
 小石川伝通院に、男たちが集まっている。
 「凄い人ですね、土方さん」
 「そりゃぁ、将軍警護だからな」
 「おおっ、断然闘士が出てきたぁ〜」
 歳三、総司の隣で勇が声を上げる。振り返る大勢の怪訝な顔を気にするようでもなく、よほど嬉しいとみて、しまいには泣き出す。
 そんな集団を遠くから見つめる男二人。
 「よう集まったやないか、清河どの」
 「はい」
 「楽しみにしてる。先に京へ帰ってるえ」
 サラリの直衣の衣擦れと共に、一人の公家が消える。
 そして遂に、清河が集まる浪士たちの前に現れ檄を放つ。
 「諸君、我が意に賛同してくれて、この清河八郎嬉しく思う。我々はこれより、将軍・家茂公上洛にあたり警護につく事になる。諸君の存分な働き期待している」
 歓声を上げる群衆に、清河は満足そうだった。
 その時までは。
 「どけっ!」
 その大きな声は、歳三たちの後方から聞こえてきた。
 大きな男を中心に従う数人。
 「誰です?」
 「さぁな」
 「随分、態度が大きそうな人ですね」
 「総司、聞こえるぞ」
 歳三の声が聞こえたのか、その大きな男が一睨みして通り過ぎていく。
 「お前が、清河か?」
 「…君は?」
 「水戸藩郷士、芹沢鴨」
 「芹沢くんか」
 清河の差し出した手を、芹沢は握る事はなかった。
 「勘違いしてるようだが、私の主はお前ではない」
 「なっ…」
 大勢の前で云われて、清河の眉が吊り上げかける。
 ___あの野郎、云う事は云うんだな。
 静かに芹沢を観察する歳三に、彼はどう映ったのか。