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連載小説「六連星(むつらぼし)」第26話~30話

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連載小説「六連星(むつらぼし)」第27話
「英治の破門」

 救急車で搬送された英治は、市内の救急病院へ収容された。
腹部を染めた大量の出血のために、一時は重大な事態が予測されたが、
幸いなことに細長く表皮の部分が切り裂かれただけで、内臓の損傷はなかった。

 「それにしても・・・・」と、治療にあたった杉原医師が、
被害を最小限に食い止めた新聞紙の束を手に、苦笑いをもらす。


 「女を守るために、身体を張ったという勇気は認めてやる。
 だが、新聞紙を体に巻いて守るという方法は、とんでもない間違いだ。
 任侠映画などでよく見かける方法だが、時代錯誤もはなはだしい。
 紙で、鋭利な刃先を避けられるはずがないだろう。
 それにもかかわらず、刃物を避けるために腹へ新聞紙を巻き付けておくとは、
 いまどきあきれた小僧だ。
 岡本の奴も若い連中に、いったいどういう教育をしているんだ。
 幸いなことに、相手が持っていたのが安物のナイフだったから助かったが、
 日本刀や、出刃包丁だったら即死だぞ。
 こんなものが本当に、防御の役に立つと思っているんだから、
 まったくもって、始末が悪い」



 「新聞紙は、防御の役に立たないのですか?」

 響が目を丸くして、杉原医師へ質問している。