連載小説「六連星(むつらぼし)」第26話~30話
連載小説「六連星(むつらぼし)」第29話
「思い出の小道」
俊彦のアパートを出て、少し歩くと、
山裾に沿って市内の最深部へ向かう、「山の手通り」にぶつかる。
通りを横切ると、今度は、閑静な住宅街へ入っていく生活道路が現れる。
進むにつれて、登り勾配が強くなる。
徐々に狭くなる道路は、山腹の突きあたりで急に左へ曲がる。
そこまで行くと、目の前に吾妻山(標高481m)の山麓がひろがりはじめる
登山道の入り口を目指して登って行くと、前方に『吾妻公園』の
看板が見えてくる。
「君。見るからに、本格的なランニングスタイルというやつだな。
いつ頃から、走りはじめたの」
「中高年向けの、スロージョギングというのをはじめたの。
急ぎ足を、もう少し早くしたくらいのペースで、2~3キロの距離を
集団で、ワイワイと会話しながら走っていくの。
過激に走ると身体を鍛えていない中高年は、足腰に負担がかかり過ぎて、
すぐに故障の原因になるそうです。
有酸素運動は、メタボ対策にも有効だそうです。
ふふふ。あなたもすこし、体型に気をつけないとねぇ・・・・」
汗ばんだ額へ、清子がタオルをあてる。
なだらかな坂を登り終わると、公園の入り口が現れる。
入り江のような形をしたこの公園は、三方向を山肌に囲まれている。
陽だまりの公園は、桜とチューリップの名所としても良く知られている。
作品名:連載小説「六連星(むつらぼし)」第26話~30話 作家名:落合順平