悠里17歳
「悠里!」
「サラ……」
私は桜の木の見える戸の縁に歩み寄った。予め私と篠原君が二人になることを予想していた彼女は戸の裏で一部始終を見守る証人になることを約束していた。
「意外な展開やったね。結局両想いやん」
「ホンマに。でもなーんか複雑」
サラは靴を脱いで戸から道場に入ってきた。
付き合ってた訳ではないけど、私にとっては失恋みたいなものだ。あのドキドキ感は今までに経験したことがない不思議なもので、不意に襲われると対応できなかった。告白された去年の夏以上に胸がどきどきしている
「だってそうでしょ?『好きだ』って言われた人に『実は違う人が好きだ』って言われたんやで」
「そっかそっか、辛かったね、悠里ちゃん」私の頭を撫でるサラ「人はそうやって大人になるんだ。あたしの胸で泣いてもいいよ」
両手を広げるサラ。でも言葉とは違って顔が笑っている。
「それじゃあ……、って言うわけないでしょ!」
サラに抱きつく代わりに彼女と肩を組み、二人だけの道場に笑い声が響いた。
「さぁ、次行くよ」
「次って?」
「生徒会室に決まっとうやん。しっかり見届けるよ。『二人の決着』を」
「何言うとう、それをいうなら『始まり』やんか」
「確かにその通りだ。行くよ、悠里!」
「おう、相棒!」
私とサラ、は互いに肩を組んだまま次のドラマのステージ、すなわち生徒会室でもう一人の仲間、晴乃のハッピーエンドじゃなくてスタートを見守るために道場に礼をして戸を閉めた。