小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

悠里17歳

INDEX|96ページ/108ページ|

次のページ前のページ
 

12 告白



 盛り上がった文化祭も終わり、次は期末テストが近づいて来た。道場も今週いっぱいでしばらく閉められる。それが終われば試合に受験勉強、そしてS'H'YのCDの作成、来るべきイベントは確実に近づいて来る。
 そして、だ。ライブが無事に成功すればまず解決しなければならない問題がある。晴乃との約束を守らなければならない。
 晴乃は今日、部活が終われば想いの人であるわが校の剣道部主将、篠原健太君に告白をするのだ。しかし篠原君は私のことが好きで、去年の夏合宿で私に告白をしている。あれから私は何の回答も出さずにズルズルここまで来ている。そこで先日東京で私は篠原君に告白を断ることを晴乃とサラに誓った。硬派な篠原君のことだから、晴乃のアシストになるわけではないけど、これは自分の中でけじめをつけねばならない。
 晴乃が告白する前に篠原君と二人になるチャンス、そのために今日という日を私はちゃんと作ってきたのだ――。

   * * *

 今日は試合稽古だ。対戦相手は先生が決めるが、私はこの日のために望みの相手に当たるように日頃の稽古でアピールを続けていた。そして、それは現実のものになった。   
 いつまでたっても私の名前が呼ばれない。それもそのはず、三年生になってからは女子だけでなく剣道部の誰と相手をしても互角もしくはそれ以上に戦えるようになっていていることが実感できている。今までの「何となく」ではない。
 アメリカでの武者修行、S'H'Yでの活動がリンクしている証なのだろうか。今の私はすべての歯車がうまく機能している。まともに勝負して対等なのは彼ひとりしか、いない――。

 そして、先生は最後の対戦相手の名前を呼み上げた。
「次は、篠原。倉泉!」
「ハイッ!」
 この時をずっと待っていた。男女主将対決、といっても三年の女子は私一人だけなんだけど。自分の中で超えるべきハードル、上段構えのキャプテンが相手だ。

 勝つ、絶対に。そして自分に。勝てば篠原君は私の誘いに乗ってくるはずだ。そして勝って今までの宙ぶらりんにけじめをつけるのだ。
「倉泉先輩、頑張って下さい!」
 後輩に赤たすきを付けてもらい私は立ち上がる。

    ヤァァーーーッ

「勝つんだ、悠里!運命は自分で拓くのだ」
腹の底から声を出して線の向こうにいる篠原君を見つめた。主将らしく堂々としていて、身長差はあまりないのに大きく見える。私にとって最高の相手だ。 
 礼をして帯刀、三歩前に出て蹲踞。面金の向こうには剣道部主将にして唯一の上段使い、篠原健太君が同じくギラギラした鋭い眼光で私を威圧する。 

作品名:悠里17歳 作家名:八馬八朔