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悠里17歳

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9 前日の来訪者



 いよいよ文化祭は明日に迫ってきた。東京から戻ってきておよそひと月、それぞれが勉強や部活で忙しい毎日を送っていたが、練習する時間は確保できていた。MMに頼めば場所は都合をつけてくれたし、時折千賀先生、もといギミックの元メンバーである郁さんもアドバイスをくれる。その気になったら時間をシフト出来るようになると郁さんの言う通りになってるのだから不思議なものだ。

 私たちS'H'Yの三人は生徒会室に集まり、明日の最終計画を確認していた。私と晴乃は持ち込んだギターとベースを構え、生音のみで音合わせをしていた。 
「さぁ、計画は明日だよ」
「ステージOK、機材の準備は……」
「それはあたしが何とかする」
実行委員のサラ、生徒会役員で吹奏楽部の晴乃の段取りで準備は整っている。ステージの最後は吹奏楽部の演奏になるようにサラがプログラムを作り、最後の演奏はドラムを使う曲選択をごり押したのは晴乃だ。これで吹奏楽部の演奏が終わればドラムセットがそのまま残る。サラはポジショニングを把握すれば問題ない、というのも私たちの音楽で使うタムやシンバルの数は絶対的に少ない。アンプセットは演劇部の機材と称してステージ裏に台車に乗せてカーテンを掛けて置けばごまかすことができる。
「悠里、誰か来たよ」
 物音に気付き、私は外から見られないようにギターをケースにしまっていると、そこに制服でない二人の男が部屋に入ってきた。
「明日やな、本番」
「まあ、大丈夫やろ?」
「もぉ、ビックリするやん、先生、MM」
 入って来たのは郁さんと全然似合わない作業服を着たMM、先生同伴でここまで忍び込んできた。
「久し振りやね、この雰囲気」
私たちをここまで引きずり込んだのはMMのお陰、もしくは彼の仕業。五年前の文化祭で伝説のゲリラライブをやってのけたこの男は私たちS'H'Yの指導者にして高校の先輩なのだ。
「どないよ、計画は?」
MMは帽子を取ってツルツルの黒い頭を撫で回した。
「できることは、した」
「あとは気持ちくらいです」
「そうか……」MMの黒い顔から白い歯が見えた「明日は会場のスタッフとして忍び込むので、ステージ横でしかと見届けるからな」
「ありがとうございます!」
「お礼なら郁さんに言うてくれ」
 郁さんの計らいでMMも本番当日は横に付いてくれるのは心強い。彼もまたプロデューサーとしてQUACER RECORDSの威信が掛かっているだけに珍しく本気の顔をしている。
「じゃ、計画どおりに……」晴乃が指差す。
「やるならトコトンまで……」サラが続く
「やらずの後悔は一生モノ……」私も指を差した――。

作品名:悠里17歳 作家名:八馬八朔