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載小説「六連星(むつらぼし)」第21話~25話

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 連載小説「六連星(むつらぼし)」第23話
「英治の片思い?」

 その翌日、10時を過ぎたころに響の携帯が鳴りはじめた。
布団をかぶったままの響が、枕元に有るはずの携帯を手さぐりしている。
(やっぱり呑みすぎている。ズキズキと頭が痛い・・・
これが2日酔いというものかしら)


「・・・・はい。」出ると、いきなり聞き覚えのある大きな声が響いてきた。
電話の相手は、金髪の英治だ。


 急用があるので、午後から逢ってくれと切り出された。
(別に急ぐ用事が有る訳ではなし、英治と会うのは久々だ、まぁいいか・・・)
1時過ぎなら大丈夫、と答えて響が電話を切る。
ぼさぼさの髪のまま階下へ降りて行くと、冷めた味噌汁と、
くわえ煙草のままの俊彦が、食卓で待ちかまえていた。


 「みそ汁は、もう、すっかりと冷めちまった。
 どうもお前さんのための食事は、いつもタイミングを外していくようだ。
 作り直さなければならないのが、俺の運命らしい。
 それにしても、すごいことになっているなぁ・・・お前のその頭。
 うら若き乙女が、忘れ物をした草野球のキャッチャー状態になっている」

 「どういう意味?。それって」


 「キャッチャーのミットが無い。みっともない、と言う意味さ」


 
 (朝から笑えないおやじギャグだ・・・)苦笑しつつ、響が洗面所へ向かう。
呑み過ぎたとはいえ、朝から身だしなみの配慮に欠けている・・・・
お母さんが居たら、「結婚前だというのに、いい加減にしなさい」と
きっと怒るだろうと、響がぺろりと舌を出す。
そんな響へ背後から、俊彦の声が追い掛けてきた。


 「今日は外で、知人と約束が有る。
 遅くなるかもしれないから、今日は蕎麦屋を臨時休業にする。
 そんなわけだ。じゃ、俺はもう出かける。
 もしかしたら、帰りは明日の朝になるかもしれん。
 美人がひとりだけアパートに残るわけだから、しっかり戸締りを頼んだぜ」

 「あら。これから女に逢いに行くという風に、わたしには
 聞こえましたけど・・・・」

 「そうは言っていないが、その可能性はある。
 相手が有ることだ。いくら口説いても、相手がうんと言わなければ撤退する。
 振られたら帰ってくるが、上手くいったらそのまま今日は帰ってこない」

 「あら、お母さん以外にも、やっぱり愛人が居たの! トシさんには」


 
 「俺に愛人が居たら悪いのか? 45歳になるバリバリ健康な男だぜ。
 お母さんと交際したこともあるが、それはもう25年も前の話だ。
 それから今日まではただの同級生として、清く正しい交際を
 している間柄だ。
 あ・・・・また、お前さんにうまく騙されて、口が滑っちまった。
 大人の秘密に口を挟むんじゃねぇ。
 いま、俺がしゃべったことは、お母さんには内緒だぞ。
 いいか、今の話は全部忘れろ。じゃ、行ってくる」



 あわただしく俊彦が、出掛けて行ってしまう。
(25年前に、母さんとトシさんは、やっぱり付き合っていたんだ。
そのことをトシさんは、ちゃんと認めた。
ということは、トシさんが父親であるという可能性が、
いちばん高いことになる)
洗面所から振りかえった響が、俊彦が消えていった玄関をいつまでも、
じっと、見送っている


(可能性が高まっただけで、、まだ父親と決まったわけじゃない。
でもなぜか、やっぱりどこかで、ひっかかるものが有るなぁ・・・)

 鏡の前に立ち、すっかり雀の巣のようになっている自分の髪の毛を、
あちこちへ引っ張りながら、響がポツリとつぶやく。


 (もう少し、しっかりとした証拠が欲しいな・・・。
 いまのままだと、トシさんが、怪しいと言うだけでおしまいになる。
 お母さんい聞いたところで、ホントの事は言わないだろうし、
 トシさんも、絶対に白状なんかしないだろうな。
 手がかりをつかむために、うまい作戦を考え出す必要があるなぁ・・・)