小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

連載小説「六連星(むつらぼし)」第16話~第20話

INDEX|9ページ/10ページ|

次のページ前のページ
 

 
連載小説「六連星(むつらぼし)」第20話
「平塚らいてう(雷鳥)」


 「明治時代に、女性の主体性について熱く説いた人がいたなんて、
 たいへん衝撃です。
 でも雄作さんは、随分、なんに関しても詳しく良く知ってらっしゃいます。
 まるで学校の先生のようですねぇ」


 「響。この人の、無精ひげに騙されてはいけないよ。
 この人は原発労働者に『転落』する前は、れっきとした大学の准教授だ。
 訳ありでねぇこれが。 あまり大きな声では説明できないが・・・・」

 俊彦が厨房から、響に言葉を掛ける。
俊彦の言葉を受けとめた当の勇作が、あははと大きな声を上げ、
腹をゆすって笑い始めてしまう。

 「実はその通りなんです!、お嬢さん。
 私はこれ(女)で、仕事をしくじりました ! 」


 目を細めた雄作が、響の前に小指を立てて見せる。
作り直した蕎麦を手に、俊彦が響のテーブルへ戻ってくる。
唖然としている響の目の前へ、美味しそうに湯気をあげている蕎麦の器が
そっと置かれる。

 「男は、もろいものです。
 最愛の妻が居て、子どもにも恵まれ、仕事の将来も有望視されていたのに、
 一人の小悪魔に、あっというまにやられました。
 小娘の誘惑に、いとも簡単に陥落したという次第です。
 いや、世間ではよくある話のひとつです。
 色仕掛とよくいいますが、可愛い顔をした女性に、妖艶に迫られてしまうと、
 男なんか、みんなイチコロで落ちます。
 男というものは、攻める時には強いのですが、
 あの手この手で、女の方から攻められてしまうと簡単に陥落してしまいます。
 いやいや、世の中のすべての男性がそうだと言う意味ではありません、
 私が誘惑に弱かった、というだけの話です」

 「そちらのお話も、後ほどゆっくりとお聞きしたいと思います。
 でも先ほどの、青鞜(せいたふ)という雑誌のお話は、もっと面白そうです。
 よかったら、もう少しその先を教えていただけますか」


 「おっ。ようやく、私の講義に食いついてきましたね。お譲さん。
 知的誘惑に早速反応するところをみると、あなたももしかしたら、
 『らいてう』と同じタイプかもしれません。
 久々に、懐かしい大学の講義のようになってきました。
 なんだか、熱い血が騒いできました」


 『へぇ面白そうだな、俺にも聞かせろ」俊彦が冷蔵庫から
ビール瓶を取り出し、2本3本と、たて続けにテーブルの真ん中へ置く。
先に授業料を払ったからなと、グラスを片手に勇作に笑いかける。
瓶を持ち上げた響が俊彦のグラスへ、ビールをとくとくと注いいでいく。