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連載小説「六連星(むつらぼし)」第16話~第20話

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 「聞くにたえない、凄惨な原発の実態です。
 福島第一原発の、あの事故が起らなければこうした事実もまた、
 闇にほうむられたままだったのでしょうか?」

 「お嬢さんはトシさんから、そんな話を聞いたことは無いですか?
 原発で働いて体調を崩し、健康を損ねた原発労働者たちが、
 何人もトシさんに助けられているのです。
 さきほども言いましたが、私もそうして助けられた一人です」

 「えっ、・・・・」

 「いや、それほど大げさなものではない。
 住所も持たず、あちこちの原発を移動している人たちが、行き詰まった時に
 住まいを提供し、医療機関を紹介しているだけの話だ。
 幸いなことに、俺の知り合いに医者も居れば弁護士も居る。
 彼らが健康を取り戻すために、そうした便宜を図っているだけの話さ。
 原発労働者のこうした問題の抜本的な解決方法は、今のところ、
 残念な話だが、まったく無い」

 「そんなぁ・・・・」

 響が大きく目を見開きます。


 「日本は、アメリカやフランスに続いて、54基(世界第3位)の
 原子力発電所を持っています。
 福井や福島、新潟などの限られた地域に集中をしています。
 すべての原発が、海沿いに建設されています。
 しかし日本の原発は、出だしから間違っていたようです。
 見切り発車という事実が有ります。
 原発の内部には、おびただしいほどの数の配管が並んでいます。
 配管だらけといってもいいでしょう。
 配管に「ひび」が入ると、やすやすと放射能が漏れることになります。
 開発当時から、たびたび「ひび」は発生しています。
 最高の溶接技術を持っている日本の溶接工の手にかかっても、
 「ひび」は当初から発生していたという話です。
 原発の開発段階から、こんな危なっかしい綱渡りの状態です。
 使用済みの危険な核燃料をどう廃棄するのか、という大切な結論も
 いまだに、まったく見つかっていません。
 今は水の入ったプールに溜めてありますが、それも間もなく満杯になります。
 満杯になったらまた、新しい貯蔵プールを作る。
 処理の方法が最終的に解決しない限り、数十年間も悪循環が続きます。
 危険物となった核燃料の、最終処理をどうするかという問題は、
 技術的にめどが立たず、お手上げという状態になっています。
 極めて危険な、使用済み燃料の『放置』が延々と続いていくことになります。
 そのうちに何とかなるだろうという程度に考えて、政府も電力会社も
 危険な使用済み核燃料の、事実上の放置を続けています。
 発足から半世紀が経った今でも、なにひとつ問題を解決しないまま
 原発は動き続けているのですから、恐ろしい現代の怪物といえるでしょう。
 見切り発車したまま、50年。
 日本は原発をいったいどうするのか、その曲がり角に来ています」