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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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風、彼方より舞い戻る 神末家綺談8

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深く眠ることもできず、夢と現の曖昧な部分をずっと漂っていた。起き上がる気力もなく、学校を休んでじっと横たわる伊吹の中には、戸惑いと不安が渦巻いている。布団の中でじっと丸まっていると、襖がノックされた。

「伊吹、いいか?」

瑞の声だ。音もなく襖が開いて、彼が入ってくる。

「・・・瑞」
「気分は」
「・・・ありがとう。平気だ」

嘘でもついて自分を鼓舞しないと、いつまでもこのままだ。伊吹は起き上がった。

「外の空気を吸いに行こう。今日は天気もいいし、気持ちいいから」

この誘いは、気を遣ってくれているのか、それとも。

「・・・わかった」

パーカーを羽織って部屋を出る。外は心地よい秋晴れだった。金木犀の匂いがあふれるように漂ってくる。紅葉が美しい。空は高く、青色は薄い。うろこ雲が横たわっている。

「・・・姉ちゃんとじいちゃんは?」
「二人して出かけてる」
「ばあちゃんもいない」
「畑にいる」
「・・・ふうん」

言葉少なに歩きながら、家から離れる。村へと続くいつもの石段に腰かけた。風が気持ちいい。伸びた髪を優しく通り抜けていくのが心地よくて、心がほんの少しだけ軽くなった気になる。

(何か言ってくれよ)

沈黙が恐ろしい。隣の瑞は、同じように遠いところを見つめているようだった。何か、決定的な言葉が瑞の言葉から紡がれる気がして、伊吹は不安になる。