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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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風、彼方より舞い戻る 神末家綺談8

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「あいつ待ってるよ、伊吹のこと」

言われ、石段を仰ぐ。先はまだまだ長そうだ。

「うん、行ってくる」

伊吹はそう答え、佐里のそばに屈みこむ。

「ばあちゃん、俺が・・・ちゃんと、全部をあるべき場所にお返ししてくる」
「伊吹・・・」
「だからもう泣かないで。瑞を、笑顔で・・・送ってあげようよ」

それは伊吹が、己にも言い聞かせ続けてきた言葉。笑っている。最後のときまで。それが瑞の願いだから。大好きな佐里が泣いていれば、瑞はきっと悲しむだろうから。

「・・・そうね、」

涙にぬれた顔を上げ、佐里は小さく微笑んだ。

「笑っていて、あげなくちゃね・・・」

そう、それが約束なのだ。
伊吹は佐里に微笑んでみせた。もう泣かない。大丈夫。
瑞の幸せのためなら、自分たちは笑ってさようならができるはずなのだ。

そんなふうに、彼と繋がってきたのだから。






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