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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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風、彼方より舞い戻る 神末家綺談8

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鐘?
小さな金属音が聞こえる。
伊吹は足を止め、辺りを見渡した。神社の本殿・・・みずはめの魂が眠る場所へ続く鳥居をくぐったときだった。
瑞はいない。穂積の姿もない。鳥居を超えていったのだろうと伊吹は思った。肌で感じる、境目が曖昧になる感覚。この先へは行けないはずの瑞もまた、彼女のそういった意思により、通り抜けていったということなのだろう。

暗い石段の道は、どこまでもどこまでも続いている。

婚姻の夜にしか、昇ることを許されない道。伊吹には、これがどこまで続いているのかも、その先に何があるのかも何もわからない。

それでも、この先に自分が約束を果たすべき相手が待っていることがわかった。瑞がいる。きっと伊吹を待っている。コートのポケットにある、託された櫛を握り締め、伊吹は息を吸った。

暗く冷たい石段を登る。鬱蒼と生い茂る木々の隙間から、ほんのわずかに降って来る月明かりの隙間に、またしても小さな金属音を聞く。

(・・・なんだろう、鈴・・・?)

りん、とか、ちん、とか、そんなふうに聞こえた気がする。音の出所も正体も不明だが、不思議と嫌な感じはしない。懐かしく、どこか寂しい音。

「・・・あれっ」

どれくらい登っただろう。見上げた石段の途中に、二つの人影が見えた。

「ばあちゃん、姉ちゃん!」

身を寄せ合って座り込んでいるのは、佐里と小夏だった。

「あれ、伊吹だ」
「何してるの?どうしたの?」
「どうって・・・呼ばれたんですよ」

木々の隙間から降る月明かりに、佐里が静かに微笑む。

「よば、れた?」
「ええ。気がついたらここにいた・・・ねえ小夏」
「うん。あたし、紫暮さんや大伯父様と、村の境目で結界を張りなおしてたはずなんだけど、誰かに名前を呼ばれて・・・気がついたらここにいた」

みずはめだ。彼女がまた、縁の深い者を呼び寄せている。