雨と匂い
「まあでもこれで、帰れるんだから行こう!ほら愛羅入って入ってー」
荷物はしっかり雨のあたりづらい所に持って、傘へ二人で窮屈に入る
予想以上に近くて、窮屈よりも何だか愛羅は緊張してしまう
歩き出しても、微妙に詩織と離れて(かなり肩が濡れるが)、距離をとってみたが
「ちょっと、そんなとこにいたら濡れるってー、もっとこっち来なよ!」
と、詩織が更に距離を詰めてきたので腕が完全に密着する
身体を寄せて、顔も近くて、詩織の匂いもほんのり感じるくらいだ
(え、こんな近くって、初めてかも・・・)
5mも歩いてないのに、何故かもう止まりたくなってしまう
「愛羅、歩くの遅くない?濡れるってばー」
なんて能天気に言う詩織は、愛羅の緊張なんて知らないようで
「ねえ、愛羅...」
詩織が言いかけた時、ゴゥッと突風が吹いて、小さい折りたたみ傘はめちゃくちゃに裏返って折れてしまった
途端に吹き付ける大雨と風に、
「うわあああ!!濡れる!濡れる!」
「戻ろう!学校戻ろう!」
歩いてすぐの昇降口へととんぼ返り
傘は、もう折れて修復も出来ない
これは諦めたほうが良さそうだ
下駄箱と廊下の近くに腰掛けて、濡れた腕を拭き、
「もー、何がこんな時の為だよ!一発でやられてんじゃん!」
「ごめんごめんー」
二人して、この状況にはもう笑うしかない