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関西夫夫 クーラー3

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・・・・あ、でも、花月が俺の死に水とるんやから、それでもええんか・・・・それやったら、そう言うてくれたらええのに・・・・でも、今から保険かけても・・・たんと金入るんかな・・・・

「なあ、堀内さん、それ、俺の受取人を花月にしても貰えるもんやろか? 赤の他人やねんけど。」
「それは可能や。形としては贈与ってことになるから税金はかかるかもしれへんが、受取人は指定できるはずや。・・・・おい、みっちゃん? 」
「さよか・・・ほな、保険かけようかな。そしたら、花月の老後が楽になるわ。」
「いやいや、みっちゃん? 何言うてんねん? 」
「あんたが言うたんやろ? 俺に保険掛けて殺したら、金が入るって。それは、ええ手やと思うたんや。まあ、あっちは年金もらえるけど、微々たるもんやろうし、それやったら、金がしんどなったら俺が死んだらええんちゃうかな、と。」
 どうせ、死に水をとってくれるのは花月しかおらへんので、俺は、それでもええと思う。生活が苦しくなったら、その手は使える。どっかで野垂れ死にして、花月に金が入るなら、それはええ、と、俺は楽しくなって笑ってもうた。
「みっちゃんっっ、すまんっっ、わしが悪かった。もう言わへんっっ。もう言わへんから、おかしなことすんなっっ。」
「なんもおかしない。おおきに、ええこと、教えてもろたわ。たまには、おっさんも役に立つやないか。」
「いや、違う。それ、たぶん無理や。冗談なんや。」
「は? 」
「おまえの親が存命してる場合、おまえの遺産は親のとこへ行くんや。確かに、保険金の受け取りは可能やが、法廷遺留分ちゅーて、法律で取り分決まってる分は、そっちへ行く。親が死んでたら、おまえの実弟のとこへ・・・・・」
 と、ここで、堀内も、はたと気付いた。そう、恨みはないかもしれへんが、水都に対して悪感情を抱いてるアホが一人だけおる。
「実弟? それ、戸籍とか外れててもか? 」
「外れててもや。バクダン小僧は、内縁関係やし、法律上は赤の他人や。」
「・・・うーん、それはけったくそわるいな。」
「せやからやめとき。ええな? 」
「うん。」
「とりあえず用心しぃーや? なんか送ったろか? 」
「いらん。」
 相変わらずの態度なので、堀内は、そのまま電話を切って、別の人間にかけ直した。まさか、とは思うが、水都に危害を加えるとなると、そこいらしか思い浮かばなかった。
「わしや。ちょっと調べてくれるか? うちの愛人の実家の経済状態と、弟が、どうしてるかや。そいつのクルマが修理とかしてへんか、そこいらも頼むわ。金は振り込んどくさかい、急ぎで頼むで? 報告書は、本社宛で。・・・おお、せやねん・・・頼むわ・・・」
 何ヶ月も前になるが、水都の実弟が、興信所を使って、水都の居場所を調べてたことがあった。お涙頂戴ではなく、戸籍も外れた水都から、親の遺産の財産放棄を迫るためのもので、それには沢野が対応した。当人との接触禁止を申し渡し、弁護士を挟んで正式に抗議した。そのことを、水都は知らない。
 勤め先が判明しているから、そこから水都の生活圏を調べることは可能になったはずで、腹いせのイヤガラセであるとすれば、合点は行く。両親に知られず、そんなことをしていたことが両親にバレたので、それについては恨みも買っているからだ。

・・・・そんなアホがおったわ・・・せやけど、そこまでするかな・・・・どうせ何十年も先のことなんやが・・・・


 まだ、水都の両親は健在で、順当に行くなら三十年ほどは相続は発生しないはずだった。もしかして、それが発生するようなことでも起きたのか、早急に、水都に危害を加える必要が出来たのか、そこいらから調べることにした。もちろん、水都には、今回も内緒にすることは言うまでもない。
 沢野のほうにも報告したら、うっかりしとった、と、相手も声をあげた。
「せやったせやった。一人おるがな。わしに向かって、みっちゃんの罵詈雑言を吐いたアホが。」
 ただいま、二人は東海遠征中で、同じホテルに滞在している。休日なんて、ほとんどない。今は、夜からのチェックのために休憩している時間だった。
「何十年も先のことで、今更、やるもんかな? 沢野はん。」
「誰か死にかけとるんちゃうか? 調査は依頼したんか? 堀内。」
「経済状態とボケのクルマのことは、わしの知り合いのとこで調べさせてます。バクダン小僧が、小ベンツのシルバーやと言うてたらしいんで、そこいらを。」
「ほな、わしは弁護士のほうへ連絡やな。何も言うてきてないと思うんやが・・・。」
 言うが早いか、沢野も携帯で連絡を取る。こちらの弁護士は土日だから休みなどというお役所仕事はしていない。すぐに出で、確認は取れた。電話を切ると、「連絡あったらしいで。」 と、沢野がおっしゃる。
「そのボケからやなくて、父親から直接に連絡がとりたいって言うてきたらしい。それは、弁護士のほうで断ってくれたそうや。・・・せやけど、店の場所はバレてるやろ。」
 この会社に勤めていることはバレている。中部が本社で、水都は関西で仕事をしているというのは、調べられているので、支社の場所は電話帳でも判明する。そこへ、勝手に押しかけられるとなると、水都にも全部バレる。
「とはいうても、みっちゃんを休ませるにも限度がありますで。あいつが、おらんと、関西はしんどいことですわ。」
「何言うてんねん。今は、繋がってるがな。」
「はあ? 」
「みっちゃんを本社に来させて、関西の仕事をさせたらええ。オンラインで繋がってるんや。どこからでも指示は出せるしチェックも可能になるんやろ? 堀内。」
 現在、売り上げやらの日報は、全て本社のサーバーに蓄積されている。日報などの書類は、メールで送れば、本社に居ても関西の仕事をすることは可能なのだ。東海と中部は、本社で管理している。
「しかし、みっちゃんは。」
「もちろん、みっちゃんは三日に一度、家に帰ったらよろし。本社に、みっちゃんが来れば、本社の幹部どもも肝を冷やして大人しゅうしてるやろ。一石二鳥や。それぐらいの経費は、認めても問題ないで。なんせ、新幹線で通勤しとるアホからしたら微々たるもんや。大阪から名古屋やったら一時間やし、これぐらいならええとしよ。わしらも動き易い。」
 東海のチェックで沢野と堀内が出張っていると、本社で、勝手にいろいろとやらかしてくれる。そこいらの牽制に浪速を本社に出張らせておけば、沢野と堀内も動き易い。ざっと計算した沢野は、人の悪い笑みを堀内に向ける。
「それで怪我させられるもんなら怪我させたらええ。本社は裏通りなんか通らへん。それに、Nシステムも、ばっちりあるし防犯カメラもある。ホテルは会社の側のビジネスホテルにしたったら完璧や。・・・ああ、表向きは、わしらが東海に遠征してるから、こっちに座りに来いって言うてや? 」
「まだ、あのクソガキとは限りませんで? 」
「かまへん。わしの都合では、ちょうどええ。月曜に出て来いって言うて。わし、本社へ月曜なら顔を出すつもりやから。・・・・くくくく・・・ほんまに、あのアホやったら、どないしたるか、いろいろと考えるわ。」
作品名:関西夫夫 クーラー3 作家名:篠義