猫の髭は七つの夢をみる
爽やかな風がオレの髭を揺らした。
その心地良さと風に混じる匂いに オレは不覚にもその柱に鼻っ柱をぶつけた。
イテッ。そんな言葉を発するところだろうけど、なんせオレは猫だ。
言葉どおりの人さまの言葉をむやみには使いはしない。
あくまでも 猫の誇りと自覚を持って ここは『にゃぁ』と発しておこう。
しかしながら、あまりの痛さに オレの声がやや濁ったものになったことは認めよう。
『んぎゃぁ』あまりかっこいいとは言えないな。
ところで、何だ、この柱は? オレがぶつかったことによって不協和音を響かせる。
グオォーン
おそらく、柱の中は空洞なのだろう。音が柱の中に響いて反対側まで伝わった。
オレは、その音を耳底に残しながら周りを見回した。いつもならば、自慢の髭がサーチし、恐れることなどなく気ままに散歩を楽しんでいる。なのに今のオレはどうだ。
冷静が頭の中に宿り始めて見れば、何処にでもあるような人の住処の檻の中。無理に忍び込んだわけでもなく、高所から偶然落ちたわけでもなく、オレの気ままな脚が選んで踏み込んだのだ。
作品名:猫の髭は七つの夢をみる 作家名:甜茶