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私の読む「枕草子」 279段ー最終段

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内側ははじめから悪くして表面だけよく見えるもの。
唐絵の屏風。漆喰塗の石灰の壁。祭礼・仏事等の供え物(盛物)。檜皮葺の屋根の上側。
かうしりの遊。

【六】
女の表着は。
 薄色。葡萄染。萌黄。桜。紅梅。すべて薄い色の類。

【七】
唐衣(からぎぬ)は。
赤色。藤。夏は二藍(ふたあい)。秋は枯野(かれの)。襲の色目。

【八】

裳は、大海(おおうみ)海賦(かいふ)の紋。

【九】
童女の表着、汗衫(かざみ)は。
 春は躑躅(つつじ)。桜。
夏は青朽葉(あおくちば)。朽葉。
襲の色目・

【一〇】
紋様を浮き出して織った絹の織物は。
 むらさき。白き。紅梅もいいが、見飽きがずることこの上ない。

【一一】
綾織の紋様は、
 葵。かたばみ。霰にかたどり細かい模様を織り出した、あられ地(じ)

【一二】
鳥の子紙を薄く漉いた薄様色紙(うすようしきし)は、
 白。むらさき。赤。刈安染(かりやすぞめ)
 青もいい。
刈安(野草の一)の茎や葉を
煮て染めたもの。

【一三】
硯の箱は、二段重ねの蒔絵に雲と鶴の形を紋様としたもの「雲鳥の紋」。

【一四】
筆は、
鳥獣に冬季生ずる毛で柔い。使ってみると外見もいい。兎の毛。

【一五】
墨は円形の物。

【一六】
貝は、匙として用いる肉が
おちてうつろになった貝殻。
蛤(はまぐり)。とても小さ
い梅の花貝、貝細工に使われ
る。

【一七】
理髪用具を入れる櫛の箱は、蛮絵(ばんえ)
獅子・熊・鴛鴦・草木などの形を丸くめぐらして描いた紋様のが大変によい。

【一八】
鏡は八寸五分の物。

【一九】
蒔絵は、唐草模様。

【二〇】
火桶は赤色。青色。白色の地に作絵(つくりえ)墨絵に色を付けような物もよい。

【二一】
畳の縁は、高麗縁(こうらいばし)。黄色の縁。

【二二】
檳椰毛(びろうげ)の牛車はのんびりゆっくり。網代車は急いで走らせる。

色目の参考
http://www.bb.em-net.ne.jp/~maccafushigi/mac/9.htm 続 襲色目と重色目


【二三】
高い松の木立の中の東・南の格子を全部上げてあるので、涼しそうに透いて見える、そういう母屋に四尺の几帳を立てて、その前に円座を置いて、四十ばかりの見た目にさわやかな僧が、墨染めの衣、薄物の袈裟、すっきりと着付けして、黄色味を帯びた薄紅色(丁子染)の扇を使いながら一生懸命に陀羅尼経を読んでいる。

 病人が物の怪のためにひどく苦しむので、それをかり移すための人(よりまし)として
大柄の童女で、生絹の単の鮮やかなのを着たのが、袴を長くはいて膝行(いざ)り出てきて、横向きに立てた几帳のそばに坐っているので僧は外向きに身体をねじって、大変に綺麗な獨鈷(とこ)を童女に持たせて、身体を伏して読み上げる陀羅尼経は尊く感じる。

 見証(けそ)成り行きを見守る女房が大勢傍らにいて、じっと童女を見守っている。 
間もなく童女は身ぶるいしだすと、正気が失せて、僧が加持をする通りに験(げん)を現す、それも仏のお心によることで、至極尊い気がする。

よりましの童女の親族姉弟・従兄弟みんな出入を許されている。彼等が尊く思って集っているにつけても、もし童女が正気ならばどんなにきまり悪いと当惑するだろう。 当人は苦しくないのだと知りながら、ひどく辛がって泣いた様子がいたいたしいので、よりましの知人達は可哀そうに思い、その側に坐って着物を直してやりなどする。
 そうこうするうちに病人は少し良くなって、
「薬湯をください」
 と言う。北廂の奥向きに取り次ぐ若い人達は気がかりで、薬湯の盤を下げる早々、急いで戻って来て様子を見る。
女房達は単衣などを美しく着て薄物の裳などは皺が寄らずに清らかである。

物の怪に沢山詫びを言わせて、僧は調伏の手をゆるめた。童女は、
「几帳の内にいるものとばかり思いました。何とまあすっかり外に出てしまったこと。一体どんなことがあったのかしら」
と、恥ずかしくて額髪を顔に垂らしかけて
顔を隠して奥に入ろうとするのを、僧は、
「しばらく」
 と言って、加持を少しして
「どうです、さっぱりなられましたかな」
と、笑う僧はこちらが気恥かしいほど立派だ。そうして、
「もう暫くお附き添いすべきですが、勧業念仏の時刻になりましたので」
辞去の挨拶をして立ち出ると、
「もう少しだけでも」
 と、停めようとするのを制して帰ろうとするところに、上臈の女房らしいのが、御簾の近くに膝行り来て、
「まあようこそお立ち寄り下さいまして。お蔭さまで我慢しきれぬ気持でしたがただ今直ったようでございますから、くり返しお礼を申しあげます。明日も、おひまを見てお立寄り下さいませ」
と言うので、
「大層執念深い物の怪らしゅうございます。油断なさらぬが肝要でございましょう。大体快復されたようで、おめでとうございます」
と、言葉すくなに述べて出てゆくその様子は、いかにも霊験あらたかで、実際仏様が現われなされたかと思われることだ。

【二四】
きれいな童子で髪のととのった大柄な童子で、髭は生えているが、意外に髪の立派な頑丈で、気味がわるい程髪の多いのなど、以上のような童子を大勢従えて、いとまなくあちらこちらの邸で、重々しく信望がある。そんなのが、法師にしても望ましい生き方というものだ。

【二五】
宮仕する場所は、中宮・皇后。またその御所内裏。后の宮のお生みになった方で一品の宮など申し上げる方。齋院、神事に奉仕するところであるから、仏法にかかる者は罪深い者であるが、面白い。まして他所は。 
また、東宮の御母の女御の方。

【二六】
荒れた家の庭は蓬が茂って、葎(むぐら)
が這い回る、そのような庭に月がさし込んで明々と澄み切って見える。また、そのような荒れた家の板屋根の隙間から洩れてくる月光。荒くはないが風の音。 

【二七】
池のあるところの五月、長雨の時こそ味がある。菖蒲・菰(こも)生い茂って、水も緑に見えるなか、庭一面も緑になって、曇った空をどうしようもなく見つめて暮らすのは、
本当に哀れで淋しくなる。何処でも総て池あるところは哀れを感じ興味ふかい。

冬も、氷のはった朝の様子などは、改めていうまでもない。
ことさら手を加えたのよりも、ほうっておいて水草が目立つほどに荒れ、青みをおびた水面の絶え間絶え間に、月光だけは白々と映って見えるなど、まあ。
 月の影は総てどんなところでも、あわれさを感じる。


「宇津保物語」は、源氏物語の解説の中で知った古典で、自分はこの歳になるまでこのような物語があるとは知らなかった。
 
うつほものがたり【宇津保物語】
 平安中期(10世紀末)の作り物語。作者は古来の源順(みなもとのしたごう)説が有力。〈うつほ〉には〈洞〉〈空穂〉をあてることがある。初巻に見える樹の空洞に基づくもの。
[あらすじ]