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私の読む「枕草子」 157段ー200段

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と誉めているのが可笑しい。

千貫(ちぬき)の井。所在不明
少将の井。拾芥抄に鳥丸の東、大炊御門の南とある。
櫻井。大和国高市郡豊浦村。
后町(きさきまち)の井。后町は常寧殿の異名。その南承香殿へ行く廊の脇にある井。
【一六九】
 野は、嵯峨野はいうまでもない。
印南(いなみ)野。播磨国加古。明石両郡にわたる。
交野(かたの)。河内国北河内郡。
駒野。未詳。一説山城国相楽郡狛山の裾野か。
 飛火野(とぶひの)大和国添上郡春日野の南方。
 しめ野。未詳。山城・下野などの説がある。
 春日野。大和国添上郡春日山の裾野。
 そうけ野。未詳。これこそなんとなく面白い名だ。何でそんな名をつけたのだろうか。
 宮城野。陸前国宮城郡。
 粟津野 近江国滋賀郡。
小野。 小さい野、または単に野の意。固有名詞としては比叡山東麓の地名。
 紫野。山城国愛宕郡。

【一七0】
 公卿。大臣・大中納言・参議及ぴ三位以上の上達部は、左大将。右大将。春宮職(しき)の長官。大納言に準ずる官、権大納言。権中納言。「権」は定員外に権(かり)に任ずるものに冠する語。 

宰相の中将。宰相(参議の唐名)で近衛中将を兼任するもの。但し兼任には一定の格式がある。
三位の中将。四位相当の中将が特に三位となる場合の称。大臣の子か孫でなければなれない由(職原抄)。

【一七一】
 君達(きんだち)は、親王・摂家・清華等貴族の子弟。ここは公卿に対し殿上人。
 頭の中将。近衛中将で蔵人頭を兼任する者の称。
頭の弁。太政官の弁官で蔵人頭を兼ねた者の称。
(注)弁官(べんかん)
 律令制の官名。太政官に直属し、左右に分れ、左弁官は中務・式部・治部・民部の四省を、右弁官は兵部・刑部・大蔵・宮内の四省を管掌し、その文書を受理し、命令を下達するなど、行政執行の中軸をなした。左右それぞれに大弁・中弁・少弁があり、その下に大史・少史がある。「弁」は「おほともひ」と訓ずる。〈和名抄五〉

 権中将。
四位の少将。五位相当の少将が特に四位に叙した者の称。
蔵人の弁。蔵人中特に選ばれで弁官を兼ねた者。
四位の侍従。五位相当の侍従が特に四位に叙した者。
蔵人の少将。蔵人の兵衛佐。

【一七二】
 受領(ずりょう)国司の長官で任地に赴き吏務をつかさどる者。普通は守。権守・介の場合もある。
伊予の守。紀伊の守。伊予・紀伊は上国。
 和泉の守。大和の守。大和は大国とされた。


【一七三】
 権の守。任地に赴かない、所謂遙任の官。大国に限っておく。
甲斐(甲斐権守の意)越後、筑後、阿波いづれも上国とされた。

【一七四】
 大夫(たいふ)五位の通称。
 式部の大夫。式部の大丞で五位に叙し留任する者の称。
左衛門の大夫。左衛門の大尉(だいじょう)で五位に叙した者。
右衛門の大夫。

【一七五】
 法師は、
 律師。戒律の師範たる者の義。僧都に次ぐ僧官、正権があり、五位に准ず。

【一七六】
 女は
 内侍のすけ。典侍。内侍司の次官。
内侍。掌侍。内侍司の第三官。

【一七七】
 六位の蔵人などは、望むべきものでもない。叙爵即ち従五位下に叙すこと(六位の蔵人のうち任期満ちて五位に叙し殿上を下りた者)何の権の守・大夫などという人の、板屋根の狭い家屋を得て、そして、檜垣(檜板を網代に組んだ垣)の小さいもの新しく造って車庫に車を入れて、前に一尺ばかりの木を植え、牛をつないで飼っているとは、憎い者である。

 庭を綺麗に掃き清めて、紫色の革紐を用いて伊予簾を掛け渡して、布襖を貼らせて住んでいる。夜は、
「門を厳重に閉じよ」
 など指図している。いかにも前途の見込みがなく気にくわない。

親の家や舅の家なら無論のこと、叔父、兄などの住む家。睦まじい知り合いの受領が任国へ行って空き家になっている家。さもなければ女院や内親王のお子さんで家を沢山持っている、そうした当然住む筈の人がいないような家に自然と住みなどして、適当な官を得てから、いつとなくよい家をさがし出して住んだ方がよい。

【一七八】
 女が一人住んでいるところは、ひどく荒廃して、土塀なども完全でなく、池なども、水
草が生えて蓬などが庭に生い茂るとこまではいかないが、所々庭土の中から青い草が見えて寂しい雰囲気が哀れである。

気が利いた風に体裁よく手入れをして、門を修理して手堅く構えて、特に目立つ風なのは大層厭な感じがする。

【一七九】
 宮仕中の女の私宅などでも、両親が居られるのは良いことである。人の出入りが激しく奥から大勢の声が種々様々に聞え、馬の嘶く声がして、にぎやかな様子は別に非難すべき点もない。

だが、こっそりと或いは堂々と
「お里へ退出されたのも存じませんで」
または
「いつ御殿へ参上なさいますか」
などと言って、覗きに来る者がある。

思いをかけている人はまた何で訪問しない
わけがあろう。女が門を開きなどするのを、厭に機嫌を取ってゆったり構えて、男は夜中まで女と語り合おうと思うのは憎い。
「総門は閉じたか」
と問いかける声がすると、
「おっつけ閉めさせますが、まだお客がおられますので」
と女は何となく邪険に扱うように言うが、
「客が帰られたらすぐ閉じよ。近頃は盗人が
大層多いそうだ。火も用心せよ」
さらに声がかかるが、ふと聞きつける人さえ大変不愉快だ、来訪した男は。

 この客の供人達は、別に困惑もしないのか、
この客が今帰るか今帰るかと始終のぞきこんで様子をうかがう家人達をかいま見て笑っているらしい。ちょっとまねなどするのを聞いたら、まして家人違はどんなにきつく非難することだろう。それ程顔色に出して言わぬにしても、懸想の心のない人が必ず来るわけなどあろうか、だが、きまじめな客の場合は、
「夜も更けました。御門が物騒ですね」
と、笑いながら帰る者もあり、真実愛情の格別な人は、「さあもう」など度々追い立てられてもやはり居明かすので、門番が度々見廻るうちに夜が明けそうになる、それをいかにも珍しそうに思って、
「いやもう実に、今夜は御門を広々と開け放
して」
門番はわざと聞こえるように言い、面白くなさそうに暁になって閉じるらしい、それはまあ何と不快なことか。

両親が居てもそんな風だから、宿を借りて住んでいる真の親でない場合はどんなに思われるだろう、この屋の主人は遠慮されていることだろう。兄の家などで女が気にしている兄であればそうだろう。

 夜中暁を問わず門もそれほど厳重に閉じなどせず、何々の宮家とか宮中などで、殿上人なども参会して、格子をあげて冬の夜を寝ずに明かして、みんなが帰って行った後も見送っている姿はいいものである。

月がまだありながら、夜が明けてくる頃であればもっとよろしい。笛などを吹いて男が出ていったあとの気分は、すぐにも寝ることができず、人の噂などし合って、歌など披露したり聞いたりするうちに、いつか寝入ってしまうのはよいものだ。

【一八〇】