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チンタ 残してゆく じゃじゃ馬さんへ

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3 AKUと2通目



(1)

AKUを拾い
あろうことか
2通目の
手紙といっしょに
僕の机に
置いたのは君

諦めかけてた
大事な本が
手元に戻った
うれしさを
手紙のおかげで
一瞬忘れた

見覚えのある
サインと筆跡

僕は君の
天敵じゃ
なかったのか?

だけど
手紙の問いかけは
あまりに無垢で
素直だった

なにか企んで
いるんじゃないかと
勘ぐる気持ちも
萎えるほど


(2)

--理性が感情に
負けてしまうと
自分のことを
心もとなく感じる--と
君は書いたね

君に礼を
言いに行った
あの廊下で

その言葉を
僕こそ
思い知らされた

AKUはほんとに
僕の宝だったから
誰が届けて
くれたのであれ
一刻も早く
感謝の気持ちを
伝えたかった

だけどいざ
君の名前を
呼ぼうとして
あれほど
勇気が要ったことは
後にも先にも
覚えがない

僕はさぞかし
ぎこちなかったろ?

勇んで
行ってみたものの
2度も大げんかした僕に
君がどんな
態度をとるか
内心不安で
気後れしてた

君の手紙は
正しかったよ

理性が感情に
負けてしまうと
自分が
心もとなく感じる

悔しいけど
正しかった


(3)

勘のいい君だ

僕がいつも
飽かずにAKUを
読んでたことを
察したからって
驚かない

だけど君は
そもそも
どこでどうやって
僕が失くした
AKUを見つけた?

どうしてあんな
手紙を書いた?

1通目の
手紙の君とは
まるっきり人が
ちがってた

文面こそ
短くて
女の子らしい
口調だけれど

挑発でも
皮肉でも
はったりでもなく

「こんな気持ちに
なったことない?」と
正攻法で
真剣勝負を
挑んできた

じゃじゃ馬の君の
体当たり
そんな気がした

今度は僕が
答える番?

(4)

手紙への答えを
焦るつもりは
全くなかった

じっくりと
考えたかった

君の意図も
答え自体も

それに

君の目を見て
きちんと礼が
言えたから
あの日の僕は
それで充分
満足で

穏やかに
退散しようと
思ってた

でも
呼びとめられて
AKUの詩を
口ずさむ
君を見てたら

答えはあっさり
見つかった

たとえ理性が
感情に負けて
自分が自分を
心もとなく感じても

負けたなら
負けたと
僕は黙って
甘んじる
その感情が
抗いがたい
事実なら

「クウィタンに行こう」と
君を誘ったろ

あれが
口に出せる
精一杯の答えだった

向こう見ずに
体当たりしてきた
君だから

その君を
返事の代わりに
クウィタンという
僕の心の
安住の地に
連れて行って
あげたかった