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チンタ 残してゆく じゃじゃ馬さんへ

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4 クウィタン



(1)

クウィタンは
お世辞にも
品のいい
街とは言えない

せわしない人波
雑然として
埃っぽい大通り

店主も客も
ぶっきらぼうな
商店街

初めて来たと
いう君は

どこから見ても
頼りなげで

もちろん
女の君が
こんな世界に
縁がないのも
また道理

辺りをうかがう
黒い瞳は
不安げで

互いに居心地が
定まらず
とりたてて
話が弾んだ
わけでもないのに

僕のそばから
離れずに
一生懸命
ついてきたね

信号が
青になったとき

無意識に
君の手を取った

君がどう
思うかなんて
気にもしなかった

華奢で
頼りなげな君が
クウィタンの雑踏に
さらわれてしまいそうで
いたたまれなかった

ためらいがちに
握り返した
君のその手の
温かさで

初めて僕は
我に返った  


(2)

君が
僕よりも仲間たちを
優先するという事実

AKUの詩が
ふと口をつく
君になら
まず間違いなく
気に入るはずの
クウィタンを

「約束を忘れてた」
という一言で
君があっさり
離れて行こうと
する事実

そして何より

君を見送る
しかないという
動かぬ事実

僕は意地でも
冷淡だった

残念そうな
素振りを
見せないこと

無関心な
ふりをすること

君の
“親友第一主義”を
こてんぱんに
皮肉ること

あのときの
僕にできる
精一杯の
強がりだった

君が
気を悪く
することも

猛然と僕に
食ってかかる
だろうことも

3度目の泥仕合が
避けられないと
いうことも

悪態をつきながら
想像は
容易にできた

それでも
意地でも
そうしなければ
耐えられなかった


(3)

リンボンは
笑ってた

頑固で強情な
僕の肩を
お節介な
本屋の主人は
何度も何度も
押してくれた

足早に
去って行きながら
背中全体で
僕に抗議してた君

たった1度
恨めしそうに
振り返ったね

息がつまりそうで
苦しかった

クウィタンの
陽射しが
眩しすぎて
苦しかった

君をあのとき
強引に
引き止めておく
口実も
自信もなかった

追いかける
勇気もなかった

遠ざかっていく君を
ただ
見つめてるしか
なかった