初恋はきみと
秋は足早に過ぎていく。朝夕の冷え込みが厳しくなり、冬の訪れを連想させる空気の匂いが日に日に濃くなるのがわかった。庭の金木犀が咲いて、愛らしい花の匂いが零れるように家中に広がっている。伊吹は着替えて居間に向かった。今日は穂積も留守だし、朋尋のうちに遊びにいこうか。自由な休日に、足は軽い。
「おっはよーう。瑞は?」
「おはよう伊吹。あの子、まだ起きてこないの」
「えー、珍しい。見てくるよ」
襖を開けて瑞の部屋を覗くと、彼は珍しく頭から布団をかぶって横になっている。睡眠をとらないでいることが多いし、朝は誰よりも早く食事の支度をしている瑞なのに。
「どうかしたの」
「・・・俺、なんか喉へんじゃないか?」
「声おかしいよ。風邪ひいた?」
布団から顔を出した瑞は、とろんとした瞳を億劫そうに開けている。瑞でも風邪をひくのか、と伊吹は少し驚いた。
「最近・・・寒くなったからかな・・・」
「こないだサッカーの試合で雨にぬれたでしょ。それもあるんじゃない?」
「サッカー・・・?」
「応援きてくれたじゃん」
バスケにドッヂボールにバトミントン。勉強そっちのけでスポーツに夢中になっている伊吹は、小学校のサッカークラブにも属している。先週、他校生との交流戦があり、保護者らも応援にかけつけたのだ。神末家からは瑞が弁当を持って来てくれたのだが、試合の途中で豪雨となってしまった。
「だからよく身体拭いてって言ったのに」
「・・・おまえヘタッピだったな。すっころんでばっかりで・・・」
「う・・・うるさいなあ、これからうまくなるからほっといてよ。ばあちゃん呼んでくる」
「ん」
「おっはよーう。瑞は?」
「おはよう伊吹。あの子、まだ起きてこないの」
「えー、珍しい。見てくるよ」
襖を開けて瑞の部屋を覗くと、彼は珍しく頭から布団をかぶって横になっている。睡眠をとらないでいることが多いし、朝は誰よりも早く食事の支度をしている瑞なのに。
「どうかしたの」
「・・・俺、なんか喉へんじゃないか?」
「声おかしいよ。風邪ひいた?」
布団から顔を出した瑞は、とろんとした瞳を億劫そうに開けている。瑞でも風邪をひくのか、と伊吹は少し驚いた。
「最近・・・寒くなったからかな・・・」
「こないだサッカーの試合で雨にぬれたでしょ。それもあるんじゃない?」
「サッカー・・・?」
「応援きてくれたじゃん」
バスケにドッヂボールにバトミントン。勉強そっちのけでスポーツに夢中になっている伊吹は、小学校のサッカークラブにも属している。先週、他校生との交流戦があり、保護者らも応援にかけつけたのだ。神末家からは瑞が弁当を持って来てくれたのだが、試合の途中で豪雨となってしまった。
「だからよく身体拭いてって言ったのに」
「・・・おまえヘタッピだったな。すっころんでばっかりで・・・」
「う・・・うるさいなあ、これからうまくなるからほっといてよ。ばあちゃん呼んでくる」
「ん」