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漢字一文字の旅  紫式部市民文化特別賞受賞作品

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14―5 【華】

 【華】、花びらが美しく咲き乱れている形だとか。
 その【華】を、腰をかがめて抜き取る形が「拝」となり、その姿が拝む姿勢でもあり、「拝礼」となったそうな。

 うーん、なるほどと感心するが、その時々の時代に【華】はあった。
 万葉時代は額田王(ぬかたのおおきみ)、平安は絶世の白拍子・静御前、戦国時代はお市の方に浅井三姉妹、そして細川ガラシャなど。
 時代時代を色取った【華】たち、いずれもまことに儚いものだった。
 そして、ここでは引き続き小野小町。

 彼女の化粧井戸や文塚のある随心院。少し遅いが、三月中旬に二百三十本の低木の梅が狭い地にぎゅっと圧縮されて満開となる。
 その色合いは『朱華』。
 これは(はねず)と読み、淡紅の万葉色。
 この色の着物を灰で洗うと、色が抜けてしまう。移ろいやすい色だと言われている。

 【華】、時代時代に【華】は咲くが、まさに有為転変の無常に思い至らせてくれる漢字なのだ。