小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

漢字一文字の旅  紫式部市民文化特別賞受賞作品

INDEX|91ページ/269ページ|

次のページ前のページ
 

13―4 【鰒】

 【鰒】、これでは読めない。「河豚」と書けば、(フグ)と読める……かな?

 それにしても、なぜ「河の豚」なのか?
 これは豚のような姿ではなく、危険を察知すると豚のように鳴くからだとか。
 豚の鳴き声は確かブーブー。フグって、そんな鳴き声なの、ホント? と訊きたくなるが……、誰も知らない。

 さてさて、冬の旬は【鰒】。
 「フグは食いたし命は惜しし」
 その肝臓は命懸け。それでも食べて、あの世行き。

 それでは安全なところで、暖まる「てっちり」。そして、美味な「てっさ」。
 【鰒】の俗名は、当たったら死ぬから「鉄砲」。
 鉄砲がちりちりと縮こまる鍋が――「てっちり」。

 ちょっと馬鹿にしてないかと言いたいが、鉄砲の刺身を略して「てっさ」と言う。
 薄造りで、皿の絵柄が透けて見え、
 それらを箸で、四、五枚ごごごいっとすくい上げ、
 ぐるぐると箸に巻き付けて、もみじポン酢にドボンと漬け、前歯でしごきとり、ガボッと、大阪の一番人気の女優・藤山直美が一口で。
 これぞ究極の食道楽だ!

 そんな対談グルメ番組を観ながら、「鉄砲の刺身」、一生に一度で良いから、そんな食べ方してみた〜い。
 と、羨(うらや)みながら、柿の種を口一杯に頬張って、【鰒】のヒレ酒ならぬ、梅干し入り焼酎お湯割りを……ぐびぐびと。

 いやはや、ヤケクソで飲み過ぎたら、こちらの方が【鰒】より危険かも。