漢字一文字の旅 紫式部市民文化特別賞受賞作品
13―2 【龍】
【龍】は、【竜】の字の方が古く、中国神話の動物の姿を表す。
それをより複雑かつ厳かにしたのが【龍】だとか。
2012年の干支は【龍】。そんな【龍】を三つ集めた一文字漢字。
龍
龍龍
これは【龍】の歩く様で、(トウ)と読む。
そして、その上に「雲」を被せれば、
雲
雲龍雲
これで一文字であり、八四画。総画数が一番多い漢字だ。
読みは(たいと)もしくは(おとど)。
これは人名だそうだ。
1960年代に、一人の男が証券会社に現れた。そして、名刺を差し出した。
そこには……
雲
雲龍雲
この「たいと」の名前があった。
古今東西、この一件だけが確認されている。
その後、このオジサン、どうもホントに「雲」の下に隠れてしまったらしい。いわゆる雲隠れってことかな?
さてさて、そんなお騒がせな【龍】、いつも手にしている玉が――如意宝珠(にょいほうじゅ)だ。
意のままに願いを叶えてくれる龍玉、いわゆるドラゴンボール。
欲しいものだが、龍は決して手放さない。
なぜなら、龍は転生する前、人間だった。その一杯の煩悩がそこに封じ込められてあるからだ。
そんなドラゴンボール、人間に渡したら、再び煩悩が飛び出してきて、何をしでかすかわからない。危なかっしくって……。
角は鹿、頭はラクダ
眼は鬼、身体は蛇
腹は蜃(はまぐり)で
背中は鯉、爪は鷹
掌は虎、耳は牛
長髯で、背に八一枚の鱗
そして、喉下には一尺四方の一枚の逆鱗(げきりん)が
秋になると淵の底に潜み、春には天に昇る
また啼き声で嵐を呼び、竜巻となり天空に昇り
自由自在に飛翔する
そんな爬虫類? いや、【龍】が申しておりますが、夢は自分で叶えろ! と。
おいおい、つれないぞ!
やっぱり欲しいなあ、如意宝珠の――【龍】玉が。
作品名:漢字一文字の旅 紫式部市民文化特別賞受賞作品 作家名:鮎風 遊