漢字一文字の旅 紫式部市民文化特別賞受賞作品
12―3 【縮】
【縮】、右部の「宿」に「ちぢむ」の意味があるとか。
そして縮むのは距離や物だけではない。言葉も縮むのだ。
世の中、短縮語が氾濫している。
マクドナルドは関東でマック、関西ではマクド。
ケンタッキーは関東でケンタ、関西ではケンチキ。
他に婚活にアラフォー、アラカン。セクハラにパワハラ、メル友に、こんな死に方をしたい――PPK(ピンピンコロリ)――等々。
ならば、もの書き創作活動は「カキカツ」、「ソウカツ」になるかな?
一方、言葉には「縮小辞」というのがある。要は「なになにっこ」だ。
東北地方では「べこっこ」に「ねこっこ」、一般的には「ぶりっこ」など。とにかく「なになにっこ」は「ちょっと可愛いね」の意味を持つ。
そして、これがスペイン語となれば、男性名詞には「〜ito」(〜イート)、女性名詞には「〜ita」(〜イータ)。まさに、これらの付けまくりだ。
日本語で言えば、なんでもかんでも、「なになにっこ、可愛いね」と言ってるようなもの。
その代表が、朝から晩まで、男性は女性に「ボニータ」(可愛い)と言うのが務め。この「bonita」の「〜ita」(〜イータ)が縮小辞。
参考に二、三並べてみると
「poco」 : ポコ 意味は「少し」
「poquito」 : ポキート これが「ほんのちょっぴり」に
「chico」 : チコ 意味は「子供」
「chiquito」 : チキート これが「お子ちゃま」に
「gato」 : ガト 意味は「猫」
「gatito」 : ガティート これが「子猫ちゃん」に
他に人の名前、それらまでも可愛く、とにかく「なになにっこ」の付けまくりだ。ラウラはラウリータに、カタリナはカタリーナと。
ならば日本では、新生児、女の子の人気ある名前は――陽菜と結衣。
ちょっと可愛いく、スペイン風には――「ヨウニーナ」と「ユイーナ」になる。
では男の子の名前の一番人気は――「大翔」
されど……???
こんなの読めませんがな。これ、「縮小辞」以前の問題。
調べてみれば、どうも「はると」と読むらしい。
しかもパソコンで変換可。知らなかった。
で、結果、めでたく「ハルティート」となりやんした。
いやはや【縮】、同じ縮めるにしても、いろいろだ。
作品名:漢字一文字の旅 紫式部市民文化特別賞受賞作品 作家名:鮎風 遊