漢字一文字の旅 紫式部市民文化特別賞受賞作品
5―5 【粉】
【粉】、左の「分」は刀で二つに分ける意味があるそうな。そして、穀物を分けたものが【粉】だとか。
この【粉】を使った食べ物が、いわゆる「粉もん」。
かまぼこ/はんぺん系の「練りもん」からは、ちょっと距離を置いている。
「粉もん」は、たこ焼き/お好み焼き/うどん/そば等々で、パスタも入るようだ。庶民から愛されている。
だが、同じ粉でも、これは遠慮したい。
それは「花の粉」。
杉にヒノキにブタクサ……、もう堪らない。
外は春うらら、気候が良い。これに誘われて、うろついてみようものなら、粉悶嵐(こなもんあらし)。
恐怖のクシャミの七連発。その上に、悲しくもないのに目がウルウルウルと。
西洋では、これをローズ・フィーバーと呼んでいるらしい。
いわゆる薔薇熱だと。これも馬鹿にした話しだ。
ローズ?
そんな美しい「花の粉」ではない。ブタクサ・フィーバーと名付けろよ! と言いたくなってしまう。
そんな【粉】、「粉もん」は実に愛されているが、花が前に付いて、「花粉」になれば、とんでもなく嫌なヤツになってしまうのだ。
作品名:漢字一文字の旅 紫式部市民文化特別賞受賞作品 作家名:鮎風 遊