漢字一文字の旅 紫式部市民文化特別賞受賞作品
5―2 【暁】
【暁】、太陽を表す「日」の横に「尭」(ぎょう)。
この「尭」は、土器を焼く時に 棚に土器を積み上げた形で、そこから高いという意味を持つらしい。
よって、【暁】(あかつき)は日が高く昇り始める意味となる。
春の時期、なかなか布団から抜け出せない。とにかく眠い。
昔、孟浩然(もうこうねん)は「春暁」(しゅんぎょう)で詠った。
春眠 暁を覚えず
処処(しょしょ) 啼鳥(ていちょう)を聞く
夜来 風雨の声
花落つること知る 多少
春の暁はまことに眠り心地がいい。朝がきたことにも気付かず、ついつい寝過ごしてしまう、と。
さて、この【暁】とは一体朝の何時頃のことだろうか?
それは太陽が昇る前で、夜半から夜明けまでの時間帯のこと。午前四時頃のことのようだ。
その後、東の空が明るくなってくる頃を「東雲」(しののめ)と言う。
そして、ほのぼのと夜が明け始める時間帯を「曙」(あけぼの)と呼ぶ。
さらに、その「曙」より微妙に明るくなってきた頃、それが「朝ぼらけ」なのだ。
「暁」 → 「東雲」 → 「曙」 → 「朝ぼらけ」
この順番、憶えるには少しややこしい。
だが便利なもので、要は一括して、「夜明け」と言う言葉でまとめられる。
とならば、眠いのはなにも【暁】だけではないため、「春眠 暁を覚えず」、そうではなく、――春眠 「夜明け」を覚えず――の方が、きっと現実に近いということなのだろう。
作品名:漢字一文字の旅 紫式部市民文化特別賞受賞作品 作家名:鮎風 遊