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漢字一文字の旅  紫式部市民文化特別賞受賞作品

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33―4 【和】

 【和】、左の「禾」(カ)は軍門の標識の木の形であり、右の「口」は祝詞の入った器。
 これにより軍門の前で誓約し、講和することだとか。
 要は戦争を止め、平和な状態に戻すことを【和】ということらしい。ここから「和解」、「和睦」となる。
 うーん、なるほど。

 しかし、【和】に「泉」が付いて「和泉」。二文字でありながら、(いずみ)と読む。
 なぜ?

 これは奈良時代まで遡る。
 地名は二文字にせよ、と政令が発せられた。これにより「泉」という場所は、日本、つまり和の国の【和】を単に前に付け足しただけ。
 ああ、そういうことだったのかと、小学校時代の同級生の名前の謎が解け、納得。

 そして【和】と「泉」が合体した当時、ブログでドロドロとした略奪恋愛を暴露した一人の女性歌人がいた。
 それは和泉式部が綴った和泉式部日記だ。

 夢よりもはかなき世の中を、嘆きわびつつ明かし暮らすほどに……、と始まる。
 最初はただただ夫を待つ妻だった。それが歌が上手かったためかイケメンの皇子にアタックされ、やがて恋に落ちる。
 まさに不倫の典型。

 結果は夫からは絶縁され、父からは勘当されてしまう。
 そして和泉式部はもう恋に生きるしかないと覚悟を決める。

 だが、その皇子が不幸にも急死してしまう。そこへ現れたのがその弟。
 和泉式部は謎めいた和歌でその皇子をまた落とす。後は愛人になる。

 だが、それだけでは止まらなかった。お持ち帰りなどの狂恋の果てに、正妻を追い出した。そして、妻の座に座ってしまったのだ。

 和泉式部は、こんなドロドロの恋の遍歴を日記に暴露した。
 もちろん、これは当時一大スキャンダルに。
 紫式部は「だらしない女」、菅原道真は「浮かれた女」と評した。

 しかし、和泉式部は恋を貫いた。そして次の歌を残し、この世を去ったのだ。
 「あらざらむ この世の外の 思ひ出に 今ひとたびの 逢ふこともがな」
  あの世へ行く思い出として、もう一度あなたに逢いたい、と。

 いい加減にせんかい! とブログにコメントしたいが、それにしても【和】という漢字、「和解]や「なごむ」であるが、「泉」が付くと激しいものになるようだ。