漢字一文字の旅 紫式部市民文化特別賞受賞作品
31―2 【迷】
【迷】、「しんにゅう」の上に「米」が乗る。
一説によると、「米」は四方八方に通じる道。そして歩いて行く意味の「しんにゅう」と組み合わさって、どの方向に行けばよいのか分からない状況を表しているとか。
結果、道に迷い、「迷子」となってしまう。
さてさて、この道に迷うという事態、人によって差がある。いわゆる方向音痴の人がいる。
目的地に向かう時、人は誰もが脳内に地図を広げる。
だが方向音痴の人は自分を動かさず、地図を上げ下げ、さらにぐるぐる回してしまうのだ。
例えば角を曲がった時、脳内地図を90度回す。
挙げ句にずっと回しっ放しで、最終的に訳がわからなくなるそうな。
一方、方向音痴でない人は脳内地図を固定する。そして、その上を自分のキャラクターを歩かせて行く。
どうもここに迷う迷わない差が出ると言われている。
だが、最近随分と便利になった。例えば車移動の場合、ナビがある。
しかし、これでも油断大敵。目的地付近になれば、案内が終了してしまう。
実はそこからが勝負。100メーター内にあって、迷ってしまうことがあるのだから、笑い話にもならない。
とにかく【迷】、四方八方に通じる道の前に立っているのだから、そりゃあ迷いますよね、と居直るしかない。
そんな漢字なのだ。
作品名:漢字一文字の旅 紫式部市民文化特別賞受賞作品 作家名:鮎風 遊